下着工場でマスクを縫製する従業員ら(彦根市後三条町)

下着工場でマスクを縫製する従業員ら(彦根市後三条町)

 必要な人にマスクが行き渡らない状況を受け、滋賀県彦根市の地場産業である縫製業の各社が一斉にマスク生産に乗り出している。政府の外出自粛要請で消費が落ち込み、本業の下着縫製などの受注が今後減る懸念もあり、経営安定に向けて機能性や素材を工夫したマスクを自社開発する企業も出ている。

 大手メーカーに下着を卸すジャパン・アドカ(同市後三条町)は、ショーツやガードルに使う伸縮性のある化学繊維を裁断し、内側に綿を施した二重構造のマスクを開発した。
 耳掛けと一体化した作りで、全国的に不足しているゴムひもを使わずに生産できる。マスクの内側に貼る不織布の使い捨て炭シートも作ってセットにした。一緒に使えば口臭を抑える効果がある上、マスクをこまめに洗う必要がないという。3月初めから1日500枚を生産し、県内の販売会社など3社に卸している。
 下着大手メーカーでは、百貨店や路面店の来客数が減っている上、中国からの部品供給が滞っており、縫製工場への発注減が懸念されている。アドカの佐々木正幸社長(50)は「下着業界の今後は見通せない。マスクに関しては、新型コロナウイルスが終息しても需要が続くだろう。単価は決して高くない仕事かもしれないが、幅広く行き渡るように協力したい」と話す。
 下着縫製の共和産業(同市日夏町)も2月中旬から他のメーカーから委託を受け、裁断済みのパーツを縫製して布マスクを1日200枚生産している。柴田宜秀社長(56)は「マスク不足になってから(縫製の)引き合いが急に増えた。技術面では下着より容易で、生産に問題はない」と話す。
 婦人服やハンカチを手掛けるフカオ(同市池州町)は本業の受注が既に減っているといい、シルクを使った高級マスク4万枚の生産を来週から請け負う。
 これらの企業が加盟するひこね繊維協同組合は「市場低迷は長引く可能性がある。マスク製造が少しでも、苦しむ企業の足しになれば」と話す。