4月の京都はまちが活気づく。「大学のまち」で初々しい新入生たちが大学生活を始めるからだ。ただ今年はスタートから出はなをくじかれた格好だ▼新型コロナウイルスが影を落とす。京都大や同志社大、立命館大などが入学式を相次いで中止にした。しかし京大では初めてのことではない▼歴史をひもとけば、1960年代後半に本格化した大学紛争で何回か中止に追い込まれた。当時の映像や写真を見ると、69年はヘルメット姿の学生がゲバ棒を手に式場に乱入して壇上を占拠し、10秒で閉式になった。72、73年も取りやめになったとの記録が残る▼ただそんな時代であっても入学式への期待は高かったようだ。京大大学文書館の西山伸教授によると、親の教育熱のため受験競争は厳しくなっていた。学生は「もやしっ子」と呼ばれ、「教育ママ」の言葉が広がったのもこの頃だという▼西山教授は「合格の喜びはひとしおだったと想像できる」と話す。式が中止になったのは、さぞ残念だったに違いない▼それから半世紀近く、今度は新型ウイルスの「乱入」である。小中高校とは異なり、大学の入学式は何千人もが集まるのだから中止は仕方がない。新入生には苦い出だしになったが、歴史や文化にあふれた大学のまちには、それを上回る出会いがある。