新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、非正規で働く人を中心に解雇や雇い止めが広がろうとしている。

 生活を支える収入が絶たれ、先の見通しも立たない不安は、いかばかりか。雇用は個人の暮らしにとどまらず、地域社会の基盤と言っていい。大きく損なわれれば、感染終息後も立ち直りは難しくなる。

 政府は近く緊急経済対策を示すが、ぜひ雇用優先の姿勢を力強く打ち出してもらいたい。

 厚生労働省によると、最新2月の有効求人倍率は1・45倍で、2年11カ月ぶりの低水準だ。雇用情勢を示す「改善」という表現も6年9カ月ぶりに消えた。解雇や雇い止めになる見込みの人は、厚労省のまとめで千人を超えている。感染が拡大した3月は、さらに悪化が見えてこよう。

 連合の緊急労働相談には各地から悲痛な声が寄せられている。「派遣先から契約を切ると言われた」「16年間働いた会社から解雇を通告された」

 深刻なのは、観光関連やサービス業などで働く人たちだ。イベントや飲食店営業の自粛で仕事を失った人も少なくない。政府や自治体の自粛要請で、仕事をなくした人に、政治はもっと目を向けないといけない。

 休校に伴う保護者への休業補償制度では、正規・非正規の労働者だけでなく、業務委託で働くフリーランスも対象に加えられた。補償金額が少ないとの指摘もあるが、こうした柔軟な対応が非常時には必要だ。イベント自粛でも休業補償の対象を広げてはどうか。

 事業の縮小を余儀なくされた経営者が雇用維持を図るための雇用調整助成金制度も使いたい。従業員に休業手当を支給するのを助成する制度で、厚労省は今月から6月末までを特別措置の期間として、雇用保険の被保険者でなくても対象にしている。

 ただ、これまでは手続きが煩雑と指摘されており、迅速に使い勝手をよくしないといけない。

 欧米ではすでに手厚い補償や現金支給などの支援策が打ち出されている。フランスでは大臣が「解雇しないで」とラジオで直接訴え、ベルギーでは閉店命令と同時に、政府は従業員に給与の70%を支給している。危機感の表れだろう。

 日本は具体策が遅れ、その間に雇用不安が漂ってきた。安倍晋三首相は「雇用の維持と事業の継続を最優先」すると会合で強調した。有言実行で、踏み込んだ緊急経済対策を示してもらいたい。