未送致証拠が当初保管されていた旧愛知川署。2005年に廃止、東近江署に統合された(滋賀県愛荘町愛知川)

未送致証拠が当初保管されていた旧愛知川署。2005年に廃止、東近江署に統合された(滋賀県愛荘町愛知川)

■証拠開示があれば、冤罪は起こらなかった

 2019年3月の再審開始確定後、地検は県警に未送致資料を送るよう指示していた。すると、県警が内部に残していた捜査資料が多数あることが7月に分かった。県警は15年半も手元に隠していた。

 衝撃は大きかった。証拠が明らかになった直後、大津地検は再審公判での新たな有罪立証を断念した。検察関係者は「(断念に)大きく影響したことは間違いない」と打ち明けた。3月31日の再審判決の説諭で、大西直樹裁判長は「証拠開示が適切に行われていれば、(冤罪(えんざい)は)起こらなかった」と、県警の「証拠隠し」を批判した。

 刑事訴訟法は、警察が捜査で集めた証拠物は検察に送致する、と定めている。メモ書きなど全証拠を送ると膨大になるため、慣例上ある程度は裁量があるが、正式な捜査報告書を送致しないのは「違法の可能性が極めて高い」(井戸弁護団長)という。

 県警は判決後、「本来であれば、法令に基づき検察に送致されるべきだった」とし、同法違反の可能性があることを事実上認めた。しかし、未送致だった理由は「捜査員に聞き取ったが、判然としなかった」と説明。当時の捜査1課幹部だったOBらへの調査をしないといい、解明には後ろ向きだ。

 裁判では、全ての証拠が検証され、公正に審理されることが大前提だ。だが、現実は違う。警察や検察による証拠隠しは、多くの冤罪事件で繰り返し明らかになっている。