羊毛フェルト作家の市村恵子さんが手がけたネコの人形作品

羊毛フェルト作家の市村恵子さんが手がけたネコの人形作品

羊毛フェルト作家の市村恵子さん

羊毛フェルト作家の市村恵子さん

 大きな瞳のネコが、少し首をかしげながらこちらを見上げている。今にも「ニャー」と鳴き出しそうだが、実際は羊毛フェルト作家の市村恵子さん(46)が羊毛で作った人形だ。「1匹1匹、どの子も顔立ちが違う。表情は個性を再現する大切なポイントですね」。優しいまなざしを作品たちに向けながら、ほほ笑む。

 娘2人を育てながら、羊毛フェルト作家「のさき恵子」として創作活動を行う。ふわふわのウールを専用の針で押し固め、形を作り出す「ニードルフェルト」という手法。ペットをなくした人などから依頼を受け、毛並みや色合いまで実物にそっくりな人形を作り出す。

 市村さんは京都市西京区出身。幼少期から細かい作業が好きで、特に手芸が得意だった。短大卒業後、会社員として働いていたが、出産を機に家庭に入った。特技を生かして、娘たちのかばんなど小物作りを楽しむ日々。「自分の手で作ったものが、だれかを笑顔にできたことがうれしかった」と振り返る。

 羊毛フェルトとの出会いは、2017年ごろ。テレビを見ていたとき、画面に映し出された作品に目がくぎ付けになった。羊毛だけで作られた、本物のような動物たち。高校時代に飼っていたネコが死んだ際の悲しみを思い出し「そっくりに再現したい」と、針を手に取った。

 趣味で作品作りを続けていたが、知人らから「ペットに似た人形を作ってほしい」と頼まれるようになり、ホームページなどを通じて販売を始めた。現在はネコを専門に作品の制作に取り組む。

 オーダーメードの作品は、寄せられた写真を見ながら、羊毛を何色も混ぜて本物の毛並みに近づけ、目と鼻と口の配置もミリ単位で調整する。「ペットをなくしたお客さまには、写真とうり二つな完成品を見て、涙する方もいる。悲しみを少しでも癒やしたい」。今日も1針1針、思いを込めて針を動かす。