新型コロナウイルスの感染拡大で収入が減った世帯に対し、政府・自民党が1世帯当たり30万円の現金を給付することで合意した。

 給付は非課税で、所得制限は設けないという。収入が減ったことを示す資料の提示を求める「自己申告制」とする方針で、全5800万世帯のうち1千万世帯程度が対象になるとみられている。

 現金給付は政府の緊急経済対策の柱で、冷え込んだ個人消費を下支えする狙いもある。感染拡大による所得減を補塡(ほてん)し、当面の生活資金として家計を支える意義は大きい。

 長引くイベントの自粛や経済活動の停滞で、国民の暮らしへの不安は日増しに高まっている。制度設計を急ぎ、困っている人に一刻も早く支給する必要がある。

 現金給付は、世界的な金融危機となったリーマン・ショック後の2009年にも全国民に1人当たり1万2千円を一律支給する「定額給付金」として行われた。裕福な人にも支給されたため、多くが貯金に回ったと指摘されている。

 今回は世帯単位の支給とし、減収を要件にすることで対象を絞るとした。

 だが、どのように減収を認定するのかは決まっていない。基準を分かりやすく示す必要がある。

 とりわけ、フリーランスや、日雇いなど非正規の人たちは、収入の落ち込みが感染拡大によるものだと証明しづらいことが想定される。煩雑な手続きを求めるなど、申請がためらわれるような制度にしてはならない。

 明確で、申請しやすい制度にすることは、事務負担を軽減させる点からも欠かせない。

 政府は、住民税や社会保険料の減免と一元化できて効率が良いとの判断から、市区町村を申請の受け付け窓口とする方針だ。

 自治体は、申請内容が支給要件を満たしているかの判断を求められることになる。虚偽申告のおそれもあり、申請から支給までには時間がかかる可能性がある。

 時機を失することなく暮らしを支えるために、政府は自治体の受け付け事務を支援すべきだ。

 景気悪化で税収の減少が確実視されており、現金給付を含む緊急経済対策の財源確保には赤字国債の発行が避けられない見通しになっている。政府は給付の必要性を丁寧に説明し、国民の理解を得る努力を怠ってはならない。

 感染の広がりなど事態の進展に応じて給付額や対象を拡充するなど、柔軟な対応も必要になろう。