再審の判決で不当捜査を厳しく批判し、刑事司法の改善について説諭をした大西直樹裁判長(中央上)ら裁判体(大津市京町3丁目・大津地裁)=代表撮影

再審の判決で不当捜査を厳しく批判し、刑事司法の改善について説諭をした大西直樹裁判長(中央上)ら裁判体(大津市京町3丁目・大津地裁)=代表撮影

 「迎合的な態度や恋愛感情を利用し、供述をコントロールした」「弁護人との信頼を損なうような言動で防御権を侵害した」。西山美香さん(40)に無罪を言い渡した2020年3月31日の再審判決。大西直樹裁判長は冤罪(えんざい)が作られた背景に不当な捜査があったと断罪した。

 大西裁判長は説諭でも「問われるべきは捜査手続きの在り方」「取り調べや客観証拠の検討、証拠開示のどれか一つでも適切に行われていれば、このようなことは起こらなかった」と異例の言及をした。刑事司法の改善を求める強いメッセージだった。

 だが、警察、検察は馬耳東風の態度を貫いた。

 判決後、滋賀県警は「判決を真摯(しんし)に受け止める」とコメント。一方、当時の捜査に対する調査は終えたとし、再調査を否定した。さらに、当時の捜査幹部だったOBらへの聞き取りはしていないと明かし、調査結果の公表も拒んだ。

 判決翌日の4月1日、事件当時の県警幹部や捜査1課幹部らOBを訪ねた。15年前、西山さんの無罪を示唆する重大な証拠を検察に送らなかった理由は何か。取り調べ担当刑事に対する西山さんの好意を知っていたのか。「県警の公式コメント通り」「重くは受け止めている」。核心を語る者はいなかった。

 2日に上訴権を放棄した大津地検も、判決に「自白の任意性を否定した指摘には承服しかねる」と不満をみせた。

 捜査機関だけでなく裁判所も、有罪判決を出した一審大津地裁をはじめ、控訴審や再審請求審で誤判を続けてきた。