16世紀、ヨーロッパ人がアメリカ先住民の文明を滅ぼしたのは軍事力だけでなく伝染病が大きな要因だった。米国の進化生物学者、ジャレド・ダイアモンド氏が著作「銃・病原菌・鉄」で述べている▼コロンブスが梅毒を持ち帰ったとの説があるが、アメリカ大陸に持ち込まれた伝染病は天然痘やはしか、インフルエンザなど圧倒的に多く、抵抗力のない先住民に壊滅的被害を与えた▼これらの病気は人類が本来保有したものではなく、農耕・牧畜、都市化など文明が進展する中で動物から人に感染した。古代文明が数多く勃興し、東西交流の盛んだったユーラシア大陸で流行を繰り返したという▼島国の日本でも伝染病は大陸から到来した。奈良時代には天然痘が藤原氏ら権力者の命を次々奪い、都は大混乱に陥った。当時の人々は鬼や怨霊の仕業と考えた。見えない敵に恐れおののく姿は今も昔も変わらない▼以前なら局地的流行ですんだはずの新型コロナウイルスが世界的に流行する背景に、移動の速さや国を超えたつながりの緊密さがある。伝染病は文明発展の裏表と言える▼治療薬やワクチンがない現状では感染者自身の抵抗力に多くを頼らざるをえない。数々の流行を生き延びた先祖から受け継がれた力が、体の中で私たちを守ってくれると信じたい。