「先輩たちは厳しいぞ。妥協もしないぞ。さあ立ち向かおう」―。今年はそんな文章だった。新社会人を励ますサントリーの広告である▼1978年に作家の山口瞳さんが書き始め、脚本家倉本聰さんを経て、2000年から作家伊集院静さんが担当する。いずれも時代を代表する大人の男性が、社会人としての心構えを説いてきた▼スーツ姿が初々しい新入社員と街角ですれ違う時期だが、今年はあまり見かけない。これも新型コロナウイルスの影響だろうか。「さあ立ち向かおう」との言葉が、胸にしみる▼伊集院さんは1月にくも膜下出血で倒れ、回復後に手がけたそうだ。無頼派とも称されるが、季節ごとの花の描写にも定評がある。かつて京都市内に暮らした際、花屋から配達される切り花で学んだと、エッセーで明かしている▼卒業・入学式やパーティーの中止で、花卉(かき)農家や生花店が苦境にあえいでいるという。野山に花が咲き誇るころなのに、外出もままならない人も多い▼この機会に花束を買い求めて部屋に飾ってみるのはどうだろう。単身赴任していたころ、食卓にチューリップがあるだけで冷たい部屋を明るく感じた。気持ちがふさがりがちな時こそ、自然の力を味方に―。社会の荒海にこぎ出す若者たちにも、そんな言葉を贈りたくなる。