介護保険制度がスタートして4月で20年である。

 介護を抱え込まずに世の中全体で支える「介護の社会化」を目指す―。そんな理念で始まった制度は、多くの人々の意識を変えたといえる。

 だが定着する一方で、さまざまなほころびが顕在化するようになった。

 世界有数のスピードで進む高齢化が背景にあるのはいうまでもない。「人生100年」と言われるほど長寿化が進んだことも影響しているだろう。

 2019年のサービス利用者は487万人、19年度の総費用は11兆7千億円(予算ベース)で、ともに当初の3倍だ。

 全国の自治体では、制度の先行きを危惧する見方が広がっている。

 共同通信が都道府県庁所在地と政令市の計52自治体に実施したアンケートで、介護保険制度の維持、存続についてほとんどが「懸念する」と答えた。

 給付と負担のバランスを取りながら、いかに安定財源を確保し、サービスを持続するかが問われる。幅広く丁寧な議論が欠かせない。

 介護保険制度は40歳以上の人が支払う保険料と税金、利用者の自己負担で成り立つ。

 制度導入の契機となったのは、介護は主に「嫁」が担うものという風潮にあらがう、市民運動の広がりだった。

 だが昨年、「この20年は何だったのか」とも思わせる、ショッキングな事件があった。

 福井県敦賀市で高齢女性が、介護していた夫と義父母を殺害したとして逮捕された。「老老介護」の深刻さが浮き彫りになった。

 政府はおおむね3年に1度、制度を見直してきたが、負担増とサービス縮小の繰り返しでもあった。

 当初は1割だった自己負担割合を、15年8月から一定の収入がある人は2割とし、18年8月からは、現役並みに所得が高い人は3割に引き上げた。

 要支援1、2を対象とした訪問介護と通所介護は、全国一律の介護保険から切り離し、市区町村の事業に移した。

 65歳以上が支払う保険料は増え続け、全国平均で月額約5900円は制度開始時の2倍を超えている。

 それでも厳しい状況は変わらない。家族の介護のため離職を選ぶ人は年約10万人と高止まりしている。

 25年には団塊の世代全員が75歳以上になり、ますます高齢化が進む。制度を維持するためには、小手先の改革ではなく、長期的な視野が求められる。

 専門家は被保険者を20歳まで引き下げることや、障害者福祉と統合して国民全体で介護保険を支える形を提言している。

 介護現場の人手不足や施設入所の待機者が増えるなど、直面する困難はいろいろだ。

 大事なのは「介護の社会化」という原点である。制度維持を優先する余り、それを見失うことがあってはならない。

 介護保険は社会や地域を支える制度であり、その重要さは増すばかりだ。