自身の裁判資料を見る桜井昌司さん(水戸市)

自身の裁判資料を見る桜井昌司さん(水戸市)

■火の粉をかぶった自分たちが、ほかの冤罪被害者のために

 「火の粉をかぶった自分たちで、再審の在り方を変えたい」。2019年3月2日、再審に関する法改正や冤罪(えんざい)検証機関設置などを目指す「冤罪犠牲者の会」が東京で設立された。現在、冤罪被害者とその家族、支援者ら約100人が参加する。

 発起人の桜井昌司さん(73)=水戸市=は、長年無実の罪を着せられてきた被害者の一人だ。桜井さんも、逮捕から21年後に再審無罪を受けた東住吉事件の青木惠子さん(56)と同様、冤罪で最も奪われるものは「時間」だと話す。

 桜井さんは1967年発生の強盗殺人事件「布川事件」の犯人とされ、無期懲役判決を受けた。29年間の勾留・服役中に「両親を亡くし、親になる機会も失った」。11年の再審無罪まで汚名をすすげなかった。

 滋賀県のもう一つの再審事件・日野町事件(84年発生)で、強盗殺人罪で無期懲役が確定した阪原弘さんは、第1次再審請求中の11年に75歳で獄中死した。18年7月に大津地裁で再審開始決定がなされたが、大津地検が大阪高裁に即時抗告し、まだ再審の扉は開いていない。

 検察の不服申し立ては、再審開始の大きな壁だ。冤罪が疑われる事件で、地裁が再審開始決定を出しても、すぐに再審は始まらない。検察側は不服があれば即時抗告でき、高裁が決定しても特別抗告できる。多くの場合、検察側の抗告理由は明らかにされず、従来通りの有罪立証を続けているだけなのに、冤罪被害者の時間は数年単位で奪われる。

 西山美香さん(40)も大阪高裁で再審開始決定後、大阪高検が最高裁に特別抗告し、雪冤(せつえん)の日は1年3カ月も延びた。犠牲者の会は、再審決定後の検察の不服申し立て禁止を強く訴えている。