再審判決で無罪となり、大津地裁前で涙を流す西山さん。被告人一人一人の声をしっかり聞く司法に、と願っている(2020年3月31日午後0時21分、大津市京町3丁目)

再審判決で無罪となり、大津地裁前で涙を流す西山さん。被告人一人一人の声をしっかり聞く司法に、と願っている(2020年3月31日午後0時21分、大津市京町3丁目)

■今も高き「再審の壁」 全国で少なくとも12件が再審請求中

 再審の在り方を変えようとする動きは、法学者や弁護士にも広がる。2019年5月20日、「再審法改正をめざす市民の会」が立ち上がった。大きな柱は「再審請求段階での全証拠開示」と「検察の不服申し立ての禁止」「再審手続きの整備」だ。

 再審は、刑事訴訟法で「無罪を言い渡す明らかな証拠を新たに発見した場合」に開始すると規定されている。ただ、詳細な規則はない。警察や検察に眠っている証拠をどれだけ開示するか、どのように審理を進めるかといった運用は、裁判官の裁量にゆだねられ、「再審格差」として問題視されている。

 市民の会共同代表で、湖東記念病院第1次再審請求の弁護団のメンバー村井敏邦さんは、「法律がないから検察は新証拠を出さないし、不服申し立てを行う。再審の大きな目的は『冤罪被害者を救済する』なのだから、再審の長期化も避けるためにも法整備が必要」と指摘する。

 「有罪とするのに疑問が残れば再審を開始すべき」。刑事裁判の鉄則を再審についても示した1975年の最高裁白鳥決定から、45年近く。現在、日弁連が支援する再審請求は、日野町事件をはじめ全国で12件あり、検察の不服申し立てや開示されない証拠と闘い続けている。

 3月31日の西山さんの再審判決。大西直樹裁判長は説諭で「刑事司法全体の改善につなげることが大切」と強く呼びかけた。「正義」を掲げる警察と検察、裁判所には受け止めるべき責任がある。西山さんは「被告人一人一人の声をしっかり聞いてほしい。当たり前のことが当たり前にできる司法に、変わっていってくれたら」と願っている。

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 「事件性すら証明されていない」。再審で無罪判決となった湖東病院の患者死亡。ないはずの「殺人事件」を生み出したのは、虚偽の自白を誘導し、強引な有罪立証を進めた警察と検察だった。16年にわたり無実の罪を着せた「正義」とは何か、問う。