来年まで有効の映画鑑賞券などを「未来券」としてネットで販売を始めた出町座の田中誠一支配人。「できることはやり尽くしたい」と語る(京都市上京区)

来年まで有効の映画鑑賞券などを「未来券」としてネットで販売を始めた出町座の田中誠一支配人。「できることはやり尽くしたい」と語る(京都市上京区)

関西のミニシアターが共同で販売するTシャツのデザイン。まだ現物はなく、予約生産で5月から発送予定。表側は「SAVE OUR LOCAL CINEMAS」の文字を入れた

関西のミニシアターが共同で販売するTシャツのデザイン。まだ現物はなく、予約生産で5月から発送予定。表側は「SAVE OUR LOCAL CINEMAS」の文字を入れた

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、京都のミニシアターや映画関係者も支援を呼び掛けている。来場者が激減する中、「今の状態が長引けば次々と閉館に追い込まれてしまう」と危機感を募らせる。積極的に来場を呼び掛けることができないジレンマの中、関西の13館が共同で「地域の映画館を守ろう」と決起。「SAVE OUR LOCAL CINEMAS」のロゴをプリントした特製Tシャツのネット販売を急きょ始めた。映画監督らもクラウドファンディング(CF)などで寄付を呼び掛け、反響を呼んでいる。

 「劇場に来ていただくことが、なかなか難しい状況の中、どうやって映画館を守っていくか。あらゆる方法を考えないといけない」―。昨年、移転復活した映画館「京都みなみ会館」(京都市南区)の吉田由利香館長(32)は語る。来場者は通常の8割減となり、厳しさは日々増しているという。

 関西のミニシアター13館が共同で支援を訴える活動には、京都府内からは、京都みなみ会館▽出町座(上京区)▽京都シネマ(下京区)▽福知山シネマ(福知山市)▽舞鶴八千代館(舞鶴市)―の5館が参加。ほかに大阪のシネ・ヌーヴォ、神戸の元町映画館など関西を代表するミニシアターが名を連ねる。

 第1弾として、6日からネットで予約販売を始めたロゴ入りTシャツは、1枚3千円。芸大出身の吉田館長が自らデザインした。各映画館のホームページからリンクしている特設サイトで、予約や寄付を受け付ける。集まった資金は、参加劇場に均等に分配する。

 特設サイトには、映画監督や俳優ら50人以上から寄せられた支援メッセージも掲載。京都を舞台に映画「嵐電」(2019年公開)を撮った鈴木卓爾監督(53)は「映画館は失って痛切にわかるパブリックスペースで、令和の今では、いろいろな価値観を持った人たちが集う希(け)有(う)な場所。失ってはいけない」と訴える。

 各館で独自の活動も広がっている。出町座では、今月3日から、来年末まで有効の映画鑑賞券などを「出町座未来券」としてネット上のCFで販売を始めた。

 2017年末にオープンし、新旧多彩な作品上映で常連客も増えていたが、3月下旬から一気に客足が落ち、4月は通常の7~8割減。各回の上映は、一ケタやゼロが続いている。

 田中誠一支配人(42)は「営業を止めると、(時給で働く)スタッフの生活を守れなくなる。公的補償や支援が明確でない中、ぎりぎりのところで営業を続けたいのが今の正直な気持ち」とした上で「通常この規模の館は、この状態が3カ月も続くと、どうにもならなくなる。つまり閉館を余儀なくされる」と苦しさを語る。

 「出町座未来券」は、未来映画券(1300円)をはじめ、出町座1階にあるカフェや書店で使えるチケットの組み合わせなど複数コースを用意した。わずか数日で600人以上から申し込みがあった。田中支配人は「予想以上の支援を頂き、本当に有り難い。今は積極的にお誘いできないけど、いつか、また出町座に集まってほしい」と感謝する。

 全国的にもミニシアターを支援する草の根の動きは広がっている。映画「淵に立つ」で知られる深田晃司監督(40)や、「ハッピーアワー」の濱口竜介監督(41)らが、CFなどを通して寄付を募る計画を進めており、全国のミニシアター関係者と調整を進めている。

 深田監督は「今回のような有事に、真っ先に存続の危機に立たされるのは、大手資本のバックアップもなく、家内工業のような規模で営まれるミニシアターです。映画の多様な文化を絶やさないためにも、支援にご協力ください」と呼び掛ける。