昨年からよく耳にする言葉で、この正月にもあちこちで言われているはずだ。「平成最後の」。平成とはどんな時代だったのかと図書館で本を探していたら、あるタイトルが目に入った。「泳ぐイノシシの時代」▼守山市在住で奈良大名誉教授の高橋春成さんがこの本を出したのは2年前だった。琵琶湖や瀬戸内海、九州の島でイノシシの被害が見つかり、泳いで渡っていることが分かった▼住民らは対策に頭を悩ませている。だが「もともと平地にもいたイノシシを人間が山に追いやった」と高橋さん。それが再び生息地を広げ、岸まで達すると、海や湖も越えるようになった▼平成は彼らが盛んに泳ぎ始めた時代といえるかもしれない。大都市に人口が集まる一方、過疎が進む山の近くは耕作放棄地が広がる。陣地争いが日本の今を映す▼ところで12年に1度のえとなのに、初日から悪い話ばかりではちょっと気の毒だ。彼らも餌を求めて懸命に生きているだけなのだから▼欧州でもイノシシは農業の敵だが、「森の友」と呼んでいるところもあるそうだ。鼻で土を掘り返すため、耕されて植物が生育しやすくなるからという。猪突(ちょとつ)猛進の本家がすいすい泳ぐ姿は、意外性もある。何ごとも「ありき」で突き進みがちの人には、今年の手本になるのではないか。