出演した成海璃子(左端)、須藤蓮(右から3人目)、岡山天音(同2人目)ら。「京都に泊まり込んで撮影し、学生寮のように人間関係も近くに感じられた」という=京都府庁

出演した成海璃子(左端)、須藤蓮(右から3人目)、岡山天音(同2人目)ら。「京都に泊まり込んで撮影し、学生寮のように人間関係も近くに感じられた」という=京都府庁

 京都の東大路通沿いにある築100年を超えた学生寮。建て替えたい大学側は入居者に退去通告し、寮を自治運営する学生たちは、寮に残りたいと声を上げる―。NHKが2018年夏に放映したテレビドラマ「ワンダーウォール」は、大学と学生の間にできた「壁」を描きつつ、純粋で不器用な学生寮の若者たちの輝きや葛藤を、いとおしく映し出した。映画版が全国で順次公開され、地元・京都では10日から出町座(京都市上京区)で先行公開されている。

■社会の「壁」もがき、あきらめず/人間の幸せとは何かを問う

 あらすじや映像からは京都大の吉田寮をイメージしていることが推測できるが、ドラマの中では京都のある大学の「近衛寮」としている。
 NHK連続テレビ小説「カーネーション」や、映画「ジョゼと虎と魚たち」「天然コケッコー」で知られる脚本家の渡辺あや(50)が実際の学生寮や寮生たちにも取材。虚実が交錯する物語を生み出した。
 「私たちの日常、あるいは社会は、いつのまにか多くの壁に囲まれた随分息苦しいものになってしまっているというのが若い彼らと話していて、一番強く感じさせられたことでした」という渡辺。それでも「私たちの人生は、いつか壁を乗り越え、再び向こう側の誰かとの喜びを、取り戻していくために続くのだと信じたい」とする思いを、ストーリーに込めた。

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 大学寮の問題を中心に描きながら、テーマはそれだけにとどまらない。米国のトランプ大統領がメキシコとの国境に壁をつくるなど、今の社会が生み出す多くの「壁」を暗喩。その前で、自分の心の弱さにもがきながらも、あきらめない若者たちの姿を群像劇として描き、人間の幸せとは何かを問う。渡辺脚本らしい人間一人一人へのいとおしさにあふれた物語になっている。
 主な出演者は、約1500人の中からオーディションで選んだ。寮生役に、京都府井手町を舞台にした映画「神さまの轍(わだち)」で主演した岡山天音(あまね)(25)や、須藤蓮(23)らを起用。大学学生課の派遣職員役を成海璃子(27)や山村紅葉(59)=京都市出身=が演じる。

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 撮影は2018年5月、大学構内に見立てた京都府庁など京都市内各所のほか、滋賀県日野町の旧鎌掛小の木造校舎を学生寮に見立てて装飾し進めた。学生寮の室内には古本が積まれ、洗濯物が雑然とつられる中、学生たちが布団にくるまりながら語り合う場面などを撮った。
 監督は撮影当時、NHK京都放送局でドラマなどを制作していた前田悠希。映画版では、テレビでは放映しなかった未公開カットを収録し、68分にまとめた。
 京都では出町座のほか、5月8日からはイオンシネマ京都桂川でも公開予定。