富士山で大規模な噴火が起きれば、首都機能のまひを招きかねない―。噴火に伴う火山灰の影響を検討していた政府の中央防災会議作業部会が、首都圏の被害想定を公表した。

 最悪の場合、東京など7都県で噴火から3時間程度でインフラが機能低下し始める。降り積もった灰で鉄道が運休し、道路は走行不能となり、連鎖的に停電や断水、通信障害も発生する恐れがある。

 首都機能のまひは全国に影響を及ぼすが、対策は現状ではほぼ手付かずといえる。危機への備えを急がねばならない。

 富士山は国内に110ある活火山の一つで、古文書などで少なくとも10回の噴火が確認されている。最後の宝永噴火(1707年)から約300年経過し、いつ噴火してもおかしくない。

 政府は東日本大震災後、最大規模の被害を想定した災害対策を考える方針を打ち出した。都市機能が集積した首都圏に大きな影響を与える富士山の噴火想定もその一環で、被災を最小限に抑える対策づくりの第一歩ともいえよう。

 作業部会は、宝永噴火と同規模を想定し、風向きや天候の異なる三つのケースで火山灰の拡散を分析した。最も影響が大きいのは西南西の風を受け、降灰が東京都心を直撃する噴火だ。処分が必要な火山灰の量は、大震災で出た災害廃棄物の約10倍に当たる4億9千万立方メートルと推計された。

 死者発生の可能性は低いが、高速道路や鉄道といった動脈が寸断されて広い範囲で交通や物流が滞り、社会的混乱を避けられないと分析。通常の暮らしや経済活動は継続困難とみられ、首都機能のもろさを直視せざるを得まい。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って首都圏などで緊急事態宣言が発令され、深刻な状況にあるとはいえ、自然災害に対する備えもおろそかにできない。

 東京のような開発が進んだ大都市が大規模な火山灰災害に見舞われた例は世界にもない。内閣府や国土交通省など関係省庁が今後、具体的な対策の検討に着手する。講ずべき対策に優先順位を付け、順次実施していくべきだ。

 さらに東京一極集中に歯止めがかからないゆえに、災害時に被害が膨らむ。抜本的な解決には、リスク分散に向けて首都機能を仕分け、それぞれのバックアップ機能を担う仕組みを急ぎ整える必要がある。多極分散型の国土づくりによって打たれ強い国にしてこそ、長期的な危機管理につながる。