学生たちと一緒に、音楽に合わせて体を動かす親子ら(京都府宇治市槙島町、京都文教大・短大)

学生たちと一緒に、音楽に合わせて体を動かす親子ら(京都府宇治市槙島町、京都文教大・短大)

 京都文教大・短期大(京都府宇治市槙島町)では、学生たちに交じり、幼い子どもを連れた親が行き来する姿が日常の風景になっている。行き先は構内の一角にあり、自由に遊べる子育て支援室「ぶんきょうにこにこルーム」。住民グループと大学・短大、市が協力して運営し、多くの親子が安全で楽しい「キャンパスライフ」を送っている。

■授乳室、多彩催し

 昨年11月中旬の昼下がり。にこにこルームで10組ほどの親子が思い思いの時間を過ごしていた。遊具やおもちゃで遊んだり、持参したお弁当を食べたり。リラックスした表情で会話を楽しむ母親や、すやすやと寝ている乳児を抱くスタッフの姿もある。

 同ルームは2010年、子育て支援の拠点整備を望む地域の声に応え、学校法人・京都文教学園が市の補助を受けて開設。約150平方メートルの広々とした空間に授乳室や親子トイレがあり、レンジやポット、ベビーベッドを備える。

 平日の午前10時~午後4時半、0歳から就学前の子どもが無料で利用でき、離乳食や音楽、四季折々の催しも多彩だ。市内外で知られるようになり、近年は年間1万人近い親子が足を運ぶ。

 キャンパスならではの過ごしやすさもある。子ども2人と訪れた女性(26)=京都市伏見区=は「広い芝生で遊んだり、池の中をのぞいたりして楽しんでいます」。学食には子ども用の椅子を用意し、食事を同ルームに運んでもいい。看護師が常駐する健康管理センターもあり、不測の事態に駆けつけてくれる安心感がある。

 地元住民でつくるNPO法人「まきしま絆の会」が市の委託を受け、短大職員とともにスタッフとして親子を見守る。育児経験があり、国が進める「子育て支援員」の研修を受講。住民目線の親しみやすさを心がけ、スーパーや病院のことなど「地元トーク」が盛んだ。同法人のスタッフリーダー鈴木とし恵さん(62)は「子どもの成長を見届けられてうれしい」とやりがいを話す。

 主婦(40)=同市槙島町=は、3歳10カ月の長女が通う幼稚園が休みになり、5カ月の長男ととともに訪れた。「長女が(スタッフの)先生のことが好きで、ここに来たいと言ったので。いろんな人と関われるのが魅力。学生たちも優しく接してくれます」と笑みをこぼした。

■保育者の卵 経験や共感培う

 にこにこルームには、学生たちも定期的にやって来る。親子との交流は、保育士や幼稚園教諭を目指す学生らにとって、貴重な学びの場になっている。

 大型絵本の読み聞かせ、マラカス作り、音楽に合わせた触れ合い遊び…。昨年11月上旬、学生が中心となり、親子と一緒にさまざまなメニューを楽しんだ。担当したのは、短大幼児教育学科の松田千都准教授ゼミに所属する2年生たち。3回の授業で遊び内容の検討や材料の調達、進め方を確認して本番を迎えた。

 保育士や幼稚園教諭の卵であるゼミ生たちは、既に保育所などでの実習を終えている。ただ、にこにこルームは身近で、保護者ともより密接に関われる。複数回の授業を通じて、保育現場で求められるチームワークを養う狙いもある。

 1週間後の授業。学生はビデオ映像で活動の様子を振り返り、「声が小さかった」「身ぶり手ぶりをもっと大きく」などと意見を出し合った。松田准教授は「準備から協力し、お母さんへの声掛けもよかった。子どもの目線に合わせて、笑顔で対応していた」と評価。一方で「最初は親子と距離感があった。マラカスの中身が床に落ちていたのが残念」とも指摘した。

 ゼミ生の女性(20)=大阪府枚方市=は実習前にも、にこにこルームでおむつ替えを体験。「今回の実践は自信につながる。現場では保護者や先生たちと信頼関係を築き、子ども一人一人に寄り添いたい」と意気込む。

 同ルームは他にも、乳幼児の活動量やベビーサイン、食べ物の好き嫌いといった調査を含め、研究や授業で幅広く活用されている。ボランティアをする一般学生も多く、開設時から同ルームで働く短大職員の女性(45)はこう意義を語る。「最近の学生は子どもと触れ合う機会が少ないけど、ここでは保護者やスタッフ、友人が一緒なので、安心して自然な形で声掛けやお手伝いができる。保育の仕事に携わらなくても、培った経験や共感は、社会に出たり父母になったりした時にきっと生きるはずです」