イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 仕事柄、これからの季節にジトっとした森の中に入ることがあります。すると目に止まろうとする小さなハエに顔の周りをブンブンたかられ、閉口します。対策にはサングラスが有効ですが、暗い森では周りが見えにくくなるのが玉にきずです。

 ところで、ハエやアブの中には血を吸うものもいて、エサにされる側からすると厄介です。そこで対抗手段を編み出したらしい動物がいます。シマウマです。

 シマウマはなぜしま模様なのでしょう? この謎はまだ完全には解明されていませんが、いろいろな説がこれまで考えられています。カムフラージュだ。体温を下げるためかも。いや1匹1匹を見分けるためじゃないか?

 そんな中、シマウマが見られる地域では、ウマにたかるアブの仲間やツェツェバエが多いことが分かってきました。これはひょっとして…。

 そこで、シマウマと普通のウマを並べ、アブを飛ばして行動を観察する実験が英国で行われました。するとアブはシマウマの周りを飛んでも、体に近づいたときに減速せず、うまく着地できないのです。しまのせいでアブはシマウマとの距離をつかみかねているのかもしれません。そこで科学者たちはウマに白黒のしま模様が描かれた服を着せ、もう一度アブを飛ばしました。するとビンゴ! アブはしま模様を避け、服から突き出た頭ばかりに止まったのです。さらに、無地の白または黒の服を着せるとアブは体にも止まりました。そんなわけで、シマウマは虫を遠ざけるためシマウマになったという説は、今最も熱いのです。

 しまが効くのはウマだけではありません。日本ではウシにしま模様を描いて虫から守ることが試みられています。私も顔を白黒に塗って森に行けば、あのうっとうしいハエに悩まされることもないのでしょう。(京都女子大教授)

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 体にある模様。子育て方法。狩りをする手段…。いきものの世界には、人間とは異なる理屈があります。不思議で面白さに満ちた理屈を通して、多様な生き方に触れてください。

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。