埋蔵文化財を保管している伏見水垂収蔵庫。収容スペースがひっ迫し、廊下などにも出土品があふれている(京都市伏見区)

埋蔵文化財を保管している伏見水垂収蔵庫。収容スペースがひっ迫し、廊下などにも出土品があふれている(京都市伏見区)

 発掘調査の出土品をはじめとした文化財の保存や収蔵は、古代や中近世のものが優先される一方、近代遺産は後回しにされ、急速に消失している。明治改元から150年がたつ中、京都の専門家らは近代遺産も保存・収蔵の対象に広く含め、研究や展示などに活用できるよう、受け皿や仕組みを求める声を上げている。

 昨年10月下旬、座談会「近代京都産業遺産の保存と活用」が京都市上京区の同志社大であり、研究者が近代遺産消失の危機を訴えた。五条坂の京焼・清水焼の登り窯が解体されて大量の道具類が捨てられたり、和装のデザイン図案を入手したものの置き場がない実情を紹介。研究者は「個人的に引き取るケースだと、退職があったり経費を賄えない場合、廃棄・流出せざるを得ない」と嘆いた。

 個人が任意で保管している状況から、公的団体による網羅的な収集・保管に変えようと、近現代の文献や産業、考古、美術に詳しい大学教授らは7月、「京都近代産業遺産調査研究センター(仮称)」構想を掲げ、市に要望書を提出した。近代遺産は指定文化財の候補であり、観光資源にもなり得ると位置づけた上、収蔵施設の整備、専門家らとともに調査研究に取り組む場の設置、公開・発信を担う博物館や公文書館の建設を呼び掛けている。

 一定の役割が期待される京都市だが、市の収蔵施設は容量超えが近づき、数多い古代や中近世の埋蔵文化財はさらに増える勢いだ。元小学校校舎を用いて京友禅などの資料を一時的に預かるケースはあるが、市は「近代遺産を大量に受け入れるのは、現状では不可能」としている。

 一方、市が12月にまとめた今後の文化財保護方針を示す答申素案では、近代遺産について「社会環境の変化により急速に失われる可能性があり、重点的に調査、指定してゆく」と書き込むなど一定の対応も検討している。

 市埋蔵文化財研究所理事長と市歴史資料館長を兼ねる井上満郎京都産業大名誉教授は「近代の遺産を文化財として大切にしようとする国民や市民の共通認識は高まっている。当事者や関係者も多く、活用においても利点がある。国が推奨する文化財の活用は、保存が前提であり、政府や自治体として収蔵や保管の在り方を考える段階にある」と話している。