新型コロナウイルスの感染者が急増し、医療態勢のひっ迫が危ぶまれている。

 東京、大阪など7都府県に政府が緊急事態宣言を出したのは、オーバーシュート(爆発的な患者急増)が起き、対応が追いつかなくなる「医療崩壊」を防ぐのが最大の狙いだ。

 宣言を受けて各知事は住民に外出自粛を強く求めた。だが、初日の感染確認数は1日当たり500人を突破し、増加ペースは加速している。潜伏期間を考えると、感染防止の効果は表れるまで約2週間かかる。

 医療現場は、急増する患者への対応や続発する院内感染、事態の長期化への不安や疲労の色を深めている。新たな感染の抑え込みと並行し、最前線の医療態勢が持ちこたえられるよう、待ったなしで手を打っていかねばならない。

 喫緊の課題は、命にかかわる重症者への医療確保だ。

 患者の急増に伴い、既に東京や大阪では感染防止策が整った感染症指定医療機関の専用病床が足りなくなり、一般の病院で受け入れ先確保に追われている。

 さらに重篤な患者に人工肺などを使い救命する集中治療室(ICU)の態勢が日本は脆弱(ぜいじゃく)だとする指摘もある。人口10万人当たりの病床数は、医療崩壊で多数の死者が出ているイタリアの約半分だ。

 感染拡大で重症者が増えれば、他の疾病患者を含めて「助けられる命の選択」を迫られかねない。救命態勢の拡充が急務だ。

 京都府や滋賀県も一般病院に協力を求め、感染者用病床の拡充を急いでいる。現在いる患者の移動や院内感染への不安から二の足を踏む病院も多い。両府県とも患者受け入れ先の振り分けなどを調整する方針で、地域の医療機関の役割分担と相互協力を進めたい。

 病床不足を避けるため、感染者の約8割とされる無症状や軽症の人に自宅や宿泊施設に移ってもらう対策も東京などで始まった。ただ、新型コロナ患者は症状が急に重くなる場合もある。医師らが常駐して見守り、急変時の搬送などに備えておくことが欠かせない。

 感染ピーク時にも医療態勢を維持するには、病床や機器を増やすだけでなく、それらを機能させるマンパワー確保が極めて重要だ。

 限られた人員、資機材で感染の不安もある中、治療し続ける医療従事者への支えを厚くしなければならない。地域医院との連携や検査・事務作業の後方支援、退職した医師、看護師らの復帰促進など官民の総力を集める必要がある。