根も葉も一緒に調理したワサビをネコヤナギの箸と手を使って取り分ける参列者ら(京都府南丹市美山町芦生・芦生熊野権現神社)

根も葉も一緒に調理したワサビをネコヤナギの箸と手を使って取り分ける参列者ら(京都府南丹市美山町芦生・芦生熊野権現神社)

 京都府南丹市美山町芦生の芦生熊野権現神社で10日、春を告げる伝統の「わさび祭り」が営まれた。年初から食するのを断ってきたワサビが解禁される祭事で、調理された供物のワサビを食して山の神に感謝をささげ、1年の無事を祈った。
 芦生は古来、狩猟や炭焼き、木工など山の恵みを受けて暮らしてきた。山の神に対する畏敬と感謝の気持ちを表すとともに、熊狩りの無事を祈って日常的に食していたワサビを冬の間断ち、春のこの日に初めて食する直会(なおらい)の儀式につながったとされる。
 この祭りは民俗学者の柳田国男も著書で取り上げている。ワサビを供えること自体珍しいうえ、明治政府が定めた生ものではなく、調理したものを一貫して供えており、古くからの神饌(しんせん)(供物)の姿を今に伝える貴重な祭事となっている。
 神事の後、参列した住民ら約40人が1人ずつ供物のワサビをネコヤナギの箸で手に取り、辛みを味わった。祭事は新型コロナウイルス感染防止のため簡素化して行われた。