ツバキはつぼみも花も、落ちた姿も凛(りん)と美しい。古来、人々が手をかけて栽培した多様な品種が秋から春まで約半年にわたって咲き続く。園芸愛好家らがつくる京都園芸倶楽部(くらぶ)に聞くと、暖冬のためか今年は特に花付きがよいという▼日本人の美意識と伴走するように存在してきた花といわれる。福井県・鳥浜貝塚から、縄文時代の漆塗りのヤブツバキ製の櫛(くし)が出土している。髪に挿す装身具だった▼万葉集には9首がおさめられ、室町時代以降は茶席の花として盛んに栽培される。各地から京都へと集められ、園芸品種として全国へ広がった▼ブームが起きた江戸時代、さまざまな花器と取り合わせた図譜「百椿図」には、当時のそうそうたる有名人が賛を寄せ、絵師もこぞってツバキを描いた▼開花の最盛期に合わせて、京都府立堂本印象美術館(京都市北区)が「椿(つばき)、咲き誇る-椿を描いた名品たち」展を5月17日まで企画した。新型コロナの影響で6日まで臨時休館しているが、近現代の絵画を中心に魅力を紹介している▼4月の内覧会で垣間見た絵は一点一点が生花のようにも見えた。黒みを帯びた花はあでやかで、春の雪に屈せず咲く姿は生命力にあふれる。画家たちが心情を重ねたように、道ばたの花に思いを寄せて苦難を乗り切る力をもらいたい。