2012年12月から始まった景気の拡大が続いている。高度経済成長時代に4年9カ月続いた「いざなぎ景気」(1965~70年)をすでに抜き、戦後2番目だ。今月で戦後最長となる見通しという。

 好景気が継続することは喜ぶべきことだろう。なのに実感がまったくわかない。

 いざなぎ景気は年間の成長率が平均10%を超えていたが、今は平均1%台だ。戦後2番目になったのはあくまで景気拡大の長さであり、成長の大きさではない。

金融の「出口」戦略を

 デフレ脱却を目指し、13年4月から始まった金融の「異次元緩和」が円安株高による現在の景気をもたらしたのは確かだ。

 日銀は大規模な緩和政策を継続する方針を示している。

 だが物価上昇率は目標の2%に今も到達せず、袋小路に入った感は否めない。

 大都市圏では、長引く金融緩和によるカネ余りの影響で「ミニバブル」が生じている。

 京都市でも、急増する訪日観光客をあてこんだ宿泊施設の建設が過熱気味となり、関連の不動産融資が活発化。市中心部の地価は高騰している。

 その一方で、日銀の超低金利政策などによって金融機関は貸し出しや国債運用といった「本業」で稼ぐことが難しい。収益環境の悪化が深刻となっている。

 こうした中、ふくおかフィナンシャルグループと長崎県地盤の十八銀行の経営統合が決まった。生き残りをかけ、地方銀行再編の動きも進む。

 財政規律の緩みなども含め、緩和のマイナス面が顕在化してきたといえる。昨年2期目に入った日銀の黒田東彦総裁は、異次元緩和の「出口」を探らなくてはならない。

 教訓とすべきは、平成のバブル経済崩壊や金融危機リーマン・ショックだ。状況を見極め、適切に判断してほしい。

時代先取りの動きも

 金融緩和で大量のマネーが供給されても経済成長にはつながっていない。安倍晋三政権のアベノミクスは行き詰まりが指摘されている。

 10月には消費税10%への引き上げが予定されている。景気の腰折れを防ぐ名目で、安倍政権はさまざまな経済対策を講じている。

 8%増税時に景気が大きく落ち込んだ。その二の舞いを演じたくないという決意はうかがえるが、バラマキとの批判も出ている。増税の本来の目的は財政再建だったことを忘れてはならない。

 一方、民間では異業種間でタッグを組むなど、時代を先取りした動きが出始めている。

 あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)、ITを活用したシェア経済が広がってきた。

 昨年は、自動車の次世代技術を巡りトヨタ自動車とソフトバンクが提携に合意した。過疎地での配車事業や自動運転、ライドシェア(相乗り)など広範な分野での協業を目指すという。

 新サービスの核となるITや通信技術の基盤づくりで国際競争力を高めるため、自動車と通信業界の「両雄」が手を組む。一昔前なら考えられない提携である。

 京都市では、無料通話アプリを提供するLINEなどIT各社が技術開発拠点を次々に立ち上げている。優秀な人材を確保するのが狙いだ。中京区に昨年6月開設された「LINE京都」には計1千人の応募があり、このうち8割が外国人だったという。

 新たなビジネスやサービスの創造、発展には時代の流れを先読みし、大胆に挑戦していくことが必要だ。こうした意欲的な事業活動に期待したい。

 ただ、国内産業はどの分野も人手不足という構造的な問題を抱える。各企業は生産性を上げ、創意工夫することが一層求められる。設備の高度化や省力化など、将来の成長につながる積極的な投資も欠かせない。

米中を注視する市場

 その点で気がかりなのは、世界の2大経済大国である米国と中国の貿易摩擦の激化である。

 年末に、米国発の株安連鎖で日経平均株価は節目の2万円を一時割り込んだ。好調な企業業績が続き、2カ月前にはバブル後の最高値だったのが急落したのは、市場が両国の動向をはじめ世界経済の変化に敏感になっているからではないか。日本も影響は避けられない。

 米国を除く環太平洋連携協定の「TPP11」が昨年暮れに発効した。2月には日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効し、世界最大級の自由貿易市場が誕生する。農業などへの影響も懸念されるが、これを好機と捉え、内外需拡大に向けて官民が機動的に対応する必要がある。

 世界経済の追い風を受けて景気はゆるやかな回復が続いてきた。だが先行きは不透明だ。景気をどう維持し、成長を続けていくのか。「内憂外患」に直面する中、持続的な経済の好循環をつくりだせるか正念場を迎えている。