農耕定住社会への移行が、人類に感染症の試練をもたらした。そう説くのは、書店で平積みになっている山本太郎長崎大教授の新書「感染症と文明」である。周辺の環境が変わり、寄生虫や家畜が病気を持ち込むようになった▼開けてはならぬ「パンドラの箱」だったのか、ともいう。ギリシャ神話では、箱に入っていたのは悲嘆、欠乏、犯罪などの災いで、疫病もあった▼時を経た今、新型コロナによる感染が収まりそうもない。山本さんなら、交通が便利でイベントの盛んな社会をつくったことが拡大につながった、とするだろう▼今回、箱から出てきた災いも病気だけではない。感染を防ぐためとはいえ、隔離、出入国規制、開催自粛が続き、緊急事態宣言の出た7都府県には「休業要請」まで現れた。他府県にも同様の動きが広がる▼施設や店舗の関係者は「開けても地獄、閉めても地獄」と嘆く。営業には感染リスクがあり、休業すると収入が断たれる。補償があるとは限らない。居酒屋を含む飲食店は営業時間を制限された。少しでも収益を得ようと、昼から「持ち帰りできます」と叫ぶ店主らの姿が切ない▼災いが出た後、パンドラの箱に残ったのは「希望」だった。そうならば、苦難にも耐えられる。約1カ月後、感染終息との知らせを聞きたい。