地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づいて国連に再提出する温室効果ガスの削減目標について、政府は現行のまま据え置くことを決めた。

 「2030年度までに13年度比で26%削減」とする内容で、15年に定めた数値からの上積みはなかった。

 深刻な温暖化に歯止めをかけるため、世界の温室効果ガス排出を早急に減らす必要がある。国連が各国に目標の強化を求める中、世界5位の排出国である日本がこれに応じない形となった。

 環境団体などが「世界に通用しない」と一斉に批判したのは当然だろう。気候危機の回避へ真剣に取り組む意思が政府にあるのか、疑わざるを得ない。

 今年1月に本格始動したパリ協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。各国が自主的に削減目標を積み上げ、温室効果ガスを削減していく仕組みだ。

 だが、各国が現行の目標を達成しても、今世紀末には気温が3度上昇するとの予測がある。削減量の引き上げは不可欠な状況だが、中国やインドなど排出量が多い国の動きは鈍い。

 日本は主要排出国では最初の再提出というが、肝心となる目標設定に向けて深い議論があったとは思えない。政府関係者が「エネルギー基本計画の見直しがない限り、目標上積みの議論に着手できない」としていたためだ。

 18年策定の同基本計画は、再生可能エネルギーの「主力電源化」を掲げる一方で、原子力や石炭火力発電を温存している。

 30年度時点で原発の割合を20~22%に引き上げるとするが、再稼働の遅れに加えて、テロ対策の不備で運転停止を迫られる原発もあり、達成はほぼ不可能とみられている。

 一方で、温室効果ガスの排出量が多い石炭火力に大きく依存する状況が続いており、現行の削減目標の達成すら難しくなっている。

 原発頼みの排出量削減策に限界があることは明らかだ。政府は現実を直視し、再生可能エネルギーの比率を高めるなど、政策を抜本的に転換させるべきだ。

 政府は、5年後と定められている次の提出期限を待たずに削減目標を見直し、強化を目指す方針を示した。本年度はエネルギー基本計画の改定時期にあたる。「脱炭素」を軸にエネルギー戦略と温暖化対策を一体で議論し直し、踏み込んだ目標を示す必要がある。