滋賀県警本部

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 入院患者を死亡させたとして滋賀県警に2004年に逮捕され、殺人罪で懲役12年の判決を受け服役した元看護助手西山美香さん(40)が3月、大津地裁でのやり直し裁判(再審)で無罪判決を受けた湖東記念病院患者死亡事案について、県警は15日までに、17日に予定される本部長定例会見で、一切の質問を受け付けないと記者クラブ側に通告した。

 クラブ側は、県警の滝澤依子本部長らに3月31日の判決当日に会見するよう要請したが、県警は応じなかった。今月2日の無罪確定後も、県警は西山さんに謝罪せず、滝澤本部長が見解を示す場も設けていない。
 県警の定例会見は、新聞社やテレビ局など15社が加盟する「県警記者クラブ」が主催し、毎月1度行われる。本部長らが出席し、県警の施策などを説明し、クラブ幹事社が代表で質問する。内容は幹事社が加盟社の意見を取りまとめ、回答準備のため事前に総務課広報官室に通告する。
 17日は無罪確定後、初の本部長会見。幹事社は7日に西山さんへの謝罪や、取り調べ担当の刑事への恋愛感情を利用して「自白」を誘導するなどした捜査手法、再発防止策についてただすことを通告した。しかし、同室は「会見では個別事案についてコメントしない。すでに刑事企画課が対応している」と拒否。代表質問を別のテーマにするよう求め、施策への関連質問以外は受けないとした。
 県警は判決当日、刑企課の担当者が囲み取材で「無罪判決については真摯に受け止め、今後の捜査に生かしたい」などと繰り返すだけだった。
 再審判決で大津地裁は、患者の死亡はそもそも事件性がなく、西山さんの自白も不当な捜査で引き出された疑いがあるとした。大西直樹裁判長は説諭で「問われるべきは捜査手続きの在り方。虚偽の自白を誘導した取り調べや客観証拠の検討、証拠開示の一つでも適切に行われていれば、このようなことは起こらなかった」とし、「警察、検察官、裁判官らが人ごととして受け流すのではなく、刑事司法の改善につなげることが大切だ」と指摘した。

■トップが正面から説明を

 村岡啓一白鴎大教授(刑事訴訟法)の話 公的機関が会見の質問に制約を設けるのはおかしい。密室で「供述弱者」から強引に自白させた点など、裁判所からの指摘に真摯(しんし)に向き合い、捜査機関としてどう受け止めるか伝えるべきで、組織のトップの考えを正面から説明すべきだ。重要な捜査資料を開示しなかったり、虚偽の自白を生んだりした日本の刑事司法制度の課題にまで言及した裁判所の投げ掛けに、捜査を担った滋賀県警は公の場できちんと答える義務がある。

■知る権利を軽視する姿勢

 西土彰一郎成城大教授(メディア法)の話 滋賀県警は記者クラブを住民向けの「広報機関」としか見ていないのではないか。「都合の良い質問」しか受け付けないという県警の態度は、国民の知る権利や報道の自由を軽視した姿勢の表れだ。記者クラブにはいろいろと批判もあるが、主権者が適切な判断ができるよう、国民の知る権利に答えるために質問するのが仕事。権力側が隠したいと思う事実を明るみに出すため、個々の記者が連帯し、対峙(たいじ)してほしい。