頻繁にニュースをチェックしない。1日に1度は自然に触れる―。英国ウェールズで暮らす親戚の地域では、不安な時期を乗り越えるための工夫が掲示板で回覧されたそうだ▼ウイルスという見えない敵と向き合う窮屈さを抱えているのは世界共通だ。子どもは学校で友達に会えず、大人は気楽に飲みにも出歩けない。気持ちが晴れない中、回覧板には「外で人と出会ったらほほ笑む」との項目もあったという▼笑顔の効果はスポーツでも証明済みだ。野球ファンなら「尾藤スマイル」を覚えているだろう。和歌山・箕島高の故尾藤公(ただし)監督は猛練習で鍛えたが、甲子園の試合になると柔和な笑顔を浮かべて見守った。選手を落ち着かせ、底力を引き出した▼全国で活躍するラグビーの京都成章高もキーワードに据える。思うようにプレーができていないと、選手たちが「笑顔、笑顔」と声を掛け合う。楽しむことを再確認し、集中力を取り戻す▼濃厚接触を避けるため、レジを待つ列でも間隔を空ける風景は日常になった。どこでも「離れる」ことを強要されてしまうが、わずかでも笑顔を交わせば空気はふっと和らぐ▼尾藤スマイルはナインの重圧と不安を吹き飛ばした。少し肩の力を抜いてほほ笑むことも、人のつながりを分断するウイルスへの対抗策になる。