ギンメッキゴミグモのメス。銀地に黒い斑模様が特徴だ

ギンメッキゴミグモのメス。銀地に黒い斑模様が特徴だ

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 独占欲とは厄介です。例えば、好きな人ができると、独り占めしようとそばにずっといたり、頻繁に連絡しようとしてトラブルになってしまう。誰でも多かれ少なかれ覚えがあるのではないでしょうか。

 動物の世界を眺めてみると、クモのオスには、私たちから見るとギョッとするような方法で、パートナーのメスを独り占めしようとするものがいます。

 ギンメッキゴミグモという小さなクモの話です。この種のメスの交尾器には、小さな突起がついています。このクモは視力があまり良くないので、求愛を受け入れてもらったオスは、触肢(しょくし)という器官でこの突起をつかみます。これが手がかりとなって、オスメスは正しい姿勢をとることができるのです。

 こうして交尾に成功したオスは、あろうことか、突起をねじり切って交尾器を破壊し、さっさとメスのもとを立ち去ります。これではメスを独り占めできなさそうに見えますが、そうではありません。残されたメスにはもう手がかりとなる突起がないので、他のオスが言い寄って来ても、そこから先に進めないのです。つまり、メスは2度と交尾できなくなり、後に産卵するときも、すべて最初のオスの子を産むことになります。これはオスから見れば、完璧な独り占めです。

 動物にとって、どのくらい自分の子を残せるかはとても大事で、パートナーの産む卵を独り占めできるオスは有利になります。こうして、私たちの常識を軽々と超える行動が進化したのでしょう。それにしても、なぜメスはやすやすと破壊を受け入れるのでしょうか? 突起に神経は通っておらず痛みを感じることはないようです。だとしても、メスがあらがってトラブルになってもよさそうですが、どうもそうは見えない。不思議です。ここにはきっとメスの側のりくつがあるはずで、私は今、その謎を解くのに一生懸命になっています。乞うご期待。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。