イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 ほ乳類はメスだけが乳を出すことができるので、子育てするときはオスより好都合です。私も、子どもが小さかった頃、どんなにあやしても泣きやまなかったのに、母親にお乳含ませてもらってケロっとご機嫌になったのを何度も経験し、うらやましいなあと思ったものです。

 魚にも子育てをする種類はたくさんいます。ここではオスがもっぱら子育て役を担うことが多いのですが、中でも能力を激しく発達させたのが、タツノオトシゴです。カンガルーよろしく、子育て用の袋をおなかに持っているのです。メスはオスとつがいになると、この袋に卵を産みつけます。オスは受け取った卵を袋の中で守りながら酸素と栄養を与え成長させます。もうこれは「オスの妊娠」といってもおかしくありません。

 「妊娠」するからには「出産」もあります。子が独り立ちできるまでになるには数週間かかります。この時間が過ぎると、父は袋を収縮させて、小さなタツノオトシゴを次々とおなかから噴き出すのです。メスはというと、オスが妊娠している間、近くで一緒に暮らします。といっても、オスの世話をするわけではなく、オスが出産し袋に空きができるのを待ち、また卵を産みつけようというのです。

 父親が身ごもる他の例として、タツノオトシゴに近い仲間のヨウジウオがいます。こちらの場合、卵を産んだメスはオスの元を立ち去ります。他のオスを探すためです。ですが残されたオスもしたたかで、妊娠中に、体が大きくて魅力的なメスが近くにいると、おなかの子に与える栄養を少なくするだけではなく、自発的に中絶までしてしまうのです。どうせなら良いメスの子を育てたい、ということでしょうか。

 子育てするのはオスか、メスか、それとも両方か。これは動物によっていろいろです。どんなやり方だろうが、要は子が健やかにたくさん育てば良いのでしょう。イクメン万歳です。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。