あごが丸出しで、鼻のまわりに隙間も見える。安倍晋三首相が着けているマスクはいかにも小さい。それと同じものなのだろうか。政府が全国5千万世帯に2枚ずつ支給するという布マスクの配達が始まった▼不織布のマスクに比べてフィルター機能が弱く、新型コロナウイルス感染を防ぐ効果は薄いといわれる。世論調査でも7割以上が「評価しない」とするが、政府は466億円をつぎ込んだ▼感染防止の手本となるべき首相が防御機能の劣るマスクを着用し続けているなら、封じ込めへの本気さも疑わしい。全世帯配布としたため、布マスクにこだわっているかにみえる▼首相のこだわりは国民の感覚とのずれを生んでいる。緊急事態宣言を受けて東京都が出そうとした休業要請の対象業種に注文を付けて決定を遅らせ、自宅でくつろぐ自らの動画を投稿して「外出自粛による痛みを理解していない」と批判された▼当初の経済対策に盛り込まれ、取り下げられた減収世帯限定の30万円給付は「共働き世帯への考慮がない」などと不評で国民の生活実感と乖離(かいり)していたことが露呈した▼中途半端な対策は、国民に向き合う姿勢の乏しさを丸出しにし、政策立案に隙があることを浮き彫りにした。感覚のずれがさらに広がれば、小さなマスクでは隠しきれまい。