昼休みの後、念入りに手を洗うブラジル人学校の子どもたち(滋賀県愛荘町長野のコレジオ・サンタナ)

昼休みの後、念入りに手を洗うブラジル人学校の子どもたち(滋賀県愛荘町長野のコレジオ・サンタナ)

 全国で休校の動きが再び広がる中、滋賀県内のブラジル人学校が授業を続けている。共働きの保護者が多く、子どもを預ける所がない上、月謝で経営が成り立っている事情もあり、長期休校に踏み切れないからだ。新型コロナウイルスの影響で保護者の雇い止めも相次ぎ、関係者は「状況が長期化すれば資金が回らず、学校を存続できない」と危機感を募らせている。

 「もっと丁寧に手を洗って」。愛荘町のブラジル人学校コレジオ・サンタナで昼休みに公園で遊んだ子どもたちが、手洗い場に長い列を作った。教師は洗い方をポルトガル語で細かく指導している。教室は窓やドアを開け放ち、空気清浄機を使うなど換気に気を遣う。事務局の女性(43)は「夏は冷房を効かせるため窓を閉め切らねばならず、今後が心配」と表情を曇らせた。
 1歳から高校生まで75人が通う。町立の小中学校や幼稚園は11日から休んでいるが、コレジオ・サンタナは共働き世帯の子どもが多く、「学童保育を兼ねるこの学校が休むと、居場所がなくなってしまう」と継続を決めた。体育の授業で使っていた町の体育館は閉鎖になり、公民館に出向いていた日本語の授業が中止されるなど影響も大きい。消毒液は底をつき、職員が手作りするマスクも足りていない。
 だが、公立のような休校は難しい。女性校長(63)の個人経営で公的補助がなく、1人4~5万円の月謝が頼み。「普段から赤字なのに、長期に休校すれば教師の給料も家賃も払えず、学校自体がなくなる」と話す。
 保護者の雇用状況も悪化している。派遣社員として働いていた自動車関連工場との契約更新を3月末で打ち切られた保護者が数人おり、今後、短期雇用の保護者らの月謝の滞納増が見込まれるという。校長は「ブラジルは日本より感染や雇用の状況が悪く、みんな帰国もできない。不安だが、何とか居場所を残したい」と悩む。
 県内最大のブラジル人学校、日本ラチーノ学院(東近江市)も見通しは厳しい。自動車部品工場で派遣社員として働く父親が「仕事がない」と出勤を断られたことを理由に今月10日、娘2人の退学を告げに訪れたという。2008年のリーマンショック時も、雇用悪化で400人以上いた生徒数が3分の1以下に。当時の借金を今も返済し続ける。男性学院長(51)は「リーマンを乗り切ったと思ったが、新たな痛手を負うことになりそうだ」と悲観する。
 同校は中高生のみ20日からインターネットを介した自宅授業に切り替えるが、小学生以下は通常の授業を続ける。借り受ける旧公立小学校舎の家賃やスクールバスのリース料など毎月の支出は約500万円。「月謝でぎりぎり運転資金を回している。なくなれば1カ月も持たないだろう。苦しい状況を多くの人に知ってほしい」と訴える。
 コレジオ・サンタナを支援する法人の理事で、外国人問題に詳しい滋賀県立大の河かおる准教授は「個人の善意や月謝を支えにする多くの外国人学校は景気の変動を受けると、自転車操業さえ難しくなる。日本人の学校になじめない子どもたちの学びを保障するため、公的な支援が必要だ」と指摘する。