文字通り命を賭した「告発」をも黙殺するのだろうか。

 学校法人「森友学園」の国有地売却問題の真相解明を求める声が改めて高まっている。文書改ざんを強いられ、苦悩の末に自殺した財務省近畿財務局の職員が残した遺書や手記が公表され、その妻が再調査を強く求めているためだ。

 弁護士や大学教授らが参加する第三者委員会による中立公正な調査を求め、妻が3月下旬から募っている安倍晋三首相や麻生太郎財務相ら宛ての電子署名が20日までに32万6千筆を突破した。

 「命、名誉、尊厳。全てをかけた何より大切な表明です」「国会答弁は誰から見てもうそだらけ。奥さんの勇気に心が動きました」といった意見も寄せられている。

 森友学園を巡っては近畿財務局が小学校予定地として、国有地を大幅に値引きして売却していたことが2017年2月に発覚。その後、首相夫人や政治家の名前を削除した文書改ざんなどが明らかになったものの、いまだ疑惑の核心部分は不透明なままだ。

 妻は、国と改ざんを指示したとされる当時の佐川宣寿理財局長に損害賠償を求めて提訴した。

 改ざんはなぜ行われたのか、夫がなぜ自死に追い込まれたのか―「その原因と経緯が明らかになることを私は心から望んでいます」との妻の訴えはもっともだ。

 安倍氏も麻生氏も「手記と財務省の調査報告書に大きな齟齬(そご)はない」として再調査を拒んでいる。だが「2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」との妻の言葉は重い。

 共同通信社の世論調査でも、手記公表を受け、再調査する「必要がある」が73・4%に上った。国民の多くが「森友」に強い不信感を抱いているのは明らかだ。

 財務省は18年、文書改ざんを認める内部調査の報告書を公表し、改ざんを主導したと認定した佐川氏らを処分した。ところが安倍氏への忖度(そんたく)や政治家らの関与については踏み込まず、改ざんの動機や詳しい経緯は解明されていない。

 安倍氏は「財務省で徹底的に調査した。検察当局も捜査した」と主張するが、納得できぬ国民は少なくないに違いない。公正性、中立性、透明性が担保された第三者による調査は不可欠であろう。

 行政監視の役割を担う国会の責任も重大である。新型コロナウイルス感染症への対応が喫緊とはいえ、衝撃的な手記が公表された以上、疑惑をうやむやにすることは断じて許されない。