人通りがまばらな天橋立(宮津市文珠)

人通りがまばらな天橋立(宮津市文珠)

飲食店や土産物店が並ぶ天橋立近くの通り。人の姿は見られない(宮津市文珠)

飲食店や土産物店が並ぶ天橋立近くの通り。人の姿は見られない(宮津市文珠)

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全国に拡大された中、感染者が出ていない京都府北部の市町でも宿泊施設が相次いで休業し始めた。客足の減少だけが理由ではない。宿泊を受け入れたことがきっかけで集団感染が発生すれば、高齢者が多く、医療体制もぜい弱な地元に致命的なダメージとなり得るためだ。「地域を守るため」。経営者たちは苦渋の決断を迫られている。

 宮津市大島の「民宿 井筒屋」は、7都府県に緊急事態が宣言される前の4月上旬、新規予約の受け付けを停止した。経営する小嶋海平さん(32)は「客に来てもらえることはありがたいが、一方で感染のリスクを考えてしまう。目に見えないウイルスとの闘いで何が正しいのか分からず、精神的に疲弊していた」と複雑な胸中を語る。営業を続けることについて近隣住民の不安の声も耳にし、思い悩んだ末に出した結論だった。

 湾をぐるりと囲むように立ち並ぶ舟屋の景観が有名な京都府伊根町。舟屋を1棟貸しするある民宿も、今は新規予約を受け付けていない。国内宿泊客は感染が拡大する関東や京阪神からが多いといい、経営者は「高齢者が多く、医療機関が少ない地域だけに、感染者が出てしまうと、医療体制が逼迫(ひっぱく)するかもしれない」と危機感を口にする。

 丹後地域(宮津市、京丹後市、与謝野町、伊根町)は、新型コロナウイルスに感染すると重症化のリスクが高いとされる高齢者の割合が府内で最も高い。昨年3月時点で宮津市の高齢化率は41・3%、伊根町は46・7%に達し、丹後地域全体でも37%に上る。

 医療資源も乏しい。宮津市の場合、内科を診療できる医療機関はわずか13施設で、そのうち病院は1施設のみ。伊根町には病院がなく、診療所が2施設あるだけだ。同町は「診療所のスタッフが感染した場合は外来を休診する」としており、限られた医療機関の休診が住民に与える影響は極めて大きい。

 こうした地域の実情を踏まえ、日本三景の一つ、天橋立(同市)近くの宿泊施設も相次いで閉まり、飲食店や土産物店が並ぶ通りも閑散としている。天橋立観光協会は「7日に7都府県に対する緊急事態宣言が出た後、受け入れ側は『営業したいが、自分の店から感染が広がると地域の人々や医療体制に悪い影響を及ぼす』と慎重になっている」と説明する。

 府北部にとって、観光は重要な産業の一つであり、過疎化が進む中で交流人口を拡大する手だてだ。特産の「丹後とり貝」の出荷も本格化しているが、宮津市商工観光課は「今年は感染拡大防止が第一。『来てください』と大々的に発信することは難しい」と当面は我慢の時期が続くとの見方を示している。