売り主が、買い手にお金を払ってまで商品を引き取ってもらうという異常事態が現れた。

 週明けのニューヨーク原油先物相場は、指標となる米国産油種の5月渡しが、上場以来初めて、マイナス価格で取引された。

 原油の需要減に伴い在庫が急増して、貯蔵能力の限界にまで近づいている。このため、買い手がほぼ不在となってしまった。

 新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているのは、いうまでもない。世界各国で職場が休業となり、外出や渡航が規制されては、原油は以前ほど要らなくなる。

 これにより、石油関連企業の経営が悪化するだけではない。金融市場には動揺が広がり、世界でデフレへの懸念が強まりそうだ。関係国の対処を求めたい。

 原油価格はすでに、石油関連企業の利益が出ないとされる水準近くまで下落している。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国の連合体「OPECプラス」は先日、過去最大となる日量970万バレルの原油を協調減産することで最終合意した。

 供給量を減らし、価格低迷に歯止めを掛ける狙いだった。

 市場原理には沿わないが、原油の価格を平常の状態に戻し、併せて供給体制を維持するためのやむを得ない措置である。

 ところが、大幅な協調減産に取り組むとのアナウンスにもかかわらず、相場は下がり続けた。

 新型コロナによる需要減は、最終合意の減産規模を上回ると、市場が判断したことになる。

 感染拡大の終息が見通せない状況では、さらなる減産を視野に入れるべきだ。

 先月、OPECプラスの協議で、サウジアラビアが新たな減産を提案したところ、ロシアが拒否し、各国の協調姿勢が一度、崩れてしまった。サウジアラビアが一転して増産に踏み切り、今日の混乱に至っている。

 ロシアが提案を拒否したのは、減産に取り組んで価格を維持しても、OPECプラスに参加していない米国がシェールオイルを増産し、市場のシェアを奪ってしまうからだという。

 新型原油のシェールオイルを開発した米国は、いまや世界一の産油国なのに減産を免れてきた。これでは、OPECプラスだけで価格低迷に対処するのは難しい。

 事態の打開には、米国などOPECプラス以外の産油国の関与が欠かせない。関係国すべてが、結束して対応するよう求めたい。