新型コロナウイルスの感染防止対策として、国が各家庭への配布に先立って福祉施設に配った布マスクが、滋賀県内の施設にも到着している。政府は、洗って繰り返し使うことでマスク需要を減らす狙いだが、福祉現場からは「小さくて使えない」「洗うと縮む」との声も聞こえる。物資不足が続く中、国の支給マスクを活用する機会がないまま、手作りマスクで急場をしのぐ施設もあり、利用者に直接触れて支援を行う人たちの間で不安が広がっている。
大津市内で七つの障害者グループホームを展開する社会福祉法人「しが夢翔会」には、約3週間前に利用者約40人と職員向けに布マスク約70枚が送られてきた。さっそく利用者が使用したが、伸縮性がなく、鼻と口を覆えない人が多かったという。
洗うと縮んだため、利用者には裁縫が得意な職員が手作りしたマスクを配布。今も国支給の布マスクの大半は使われてない。グループホームの運営に携わる職員の山田真理子さん(45)は「不便。配るならもっと大きなマスクにしてほしかった」と話す。
利用者と直接関わる福祉の現場は感染リスクが高いとされ、広島県や千葉県では障害者福祉施設で集団感染が発生している。依然として、マスクや消毒液の入手は困難といい、山田さんは「いつ自分たちの職場で集団感染が起きてもおかしくない。人手不足の福祉業界はどう対応していけばいいのか。不安しかない」と明かす。
国から布マスクが届いた大津市内の介護老人保健施設でも「サイズが小さい」として使用せず、利用者には職員らが手作りしたマスクを配布している。
職員には、布マスクに比べ機能が高い不織布のサージカルマスクを1日1枚配布。業者から購入するマスク1枚あたりの値段は、通常より15倍ほど高値となっているが、担当者は「職員を守るためにはやむを得ない。いつまでこの状況が続くのか」と不安を口にする。