新型コロナウイルスのまん延に伴い、古都の夏を彩る祇園祭の山鉾巡行が、葵祭の路頭の儀に続き中止を余儀なくされた。

 ともに京都三大祭りのハイライトだけに残念だが、感染拡大のリスクを考えればやむを得まい。終息が見通せない中、早期の決断は妥当と言えよう。

 祇園祭の山鉾巡行は、7月17日の前祭(さきまつり)、24日の後祭(あとまつり)ともに取りやめ、神輿(みこし)渡御など関連の神事も中止、縮小されるという。巡行中止は、阪急電鉄の延伸工事による1962年以来58年ぶりだ。京の町衆が心意気を表した山鉾が巡行せず、祇園囃子(ばやし)も響かない寂しい夏となりそうだ。

 祇園祭は疫病退散を祈った祇園御霊会が起源とされ、コロナ禍が深刻な時こそ、あえて催行すべきとの声も根強い。しかし、多くの人出が予想され、屋外であっても他人と距離を保つ「社会的距離」の徹底は難しい。今は密閉、密集、密接の「三つの密」の回避が重要であり、祭礼関係者の苦渋の決断を尊重すべきであろう。

 来月15日の葵祭も、今年は路頭の儀の実施を見送る。祭りのヒロイン「斎王代」など約500人が平安王朝を再現して都大路を練り歩くため、沿道に大勢の観覧客が詰めかけ、感染拡大の恐れが高まると判断された。1995年に雨のため取りやめられたが、事前の中止決定は異例という。

 葵祭、祇園祭とも例年、多くの観光客が訪れる。昨年は京都府警の調べで、葵祭の観客が約4万7千人。祇園祭は前祭、後祭合わせて約15万3千人もの人出があり、宵々山や宵山もにぎわった。ホテルやタクシー、土産物など観光業界への悪影響は避けられまい。

 近年は祭り目当てに入洛する外国人も目立ち、さらなる訪日観光客需要を見込んでいただけに痛手に違いない。経済損失は計り知れないが、影響を最小限にとどめる手厚い支援策が欠かせない。

 青森ねぶた祭や博多祇園山笠など、全国各地で伝統祭事が中止に追い込まれている。地域の春の例祭も同様だ。いずれも催行の方策を探った末、緊急事態宣言発令で一気に自粛へ傾いたとみられる。

 地方への感染拡大を食い止めるには、観光や帰省で都道府県境を越える移動を自粛するしかない。中止はつらい決断とはいえ、今は雌伏の時と受け止めたい。

 祇園祭などは過去には戦争などで中断を強いられつつも、その都度、危機を克服して歴史を刻んできた。先人たちの思いを引き継ぎ、祭りの復興を期したい。