「引きこもり」という言葉はもともと隠遁(いんとん)生活や療養生活を指して使われてきた。それが1990年前後から不登校や若者のニート、近年は大人を含めた社会問題の文脈で用いられるようになっていく▼同様の傾向は、お隣の韓国でも顕著になり、欧州などでも例外ではなくなってきているという。日本生まれの「Hikikomori」は、国際語になりつつある▼京都市内の精神科医が「引きこもり文学大賞」を今月、創設するという記事が本紙夕刊にあった。引きこもりの人に、自分を否定せず自己肯定感を高めてほしいとの思いからだという▼最近はネットなどで引きこもりと犯罪との関連が強調され、社会の厳しい見方が本人や家族を追い込みがちだ。自身も引きこもり経験があり、当事者の立場がよく分かるのだろう▼文学賞が引きこもりに対してどんな役割を果たせるかは分からない。それでも創作活動が社会への回路を回復する一筋の道になる可能性がないとはいえないだろう▼引きこもり経験がある作家は少なくない。本屋大賞のリリー・フランキーさんや芥川賞作家の田中慎弥さん、日本ジャーナリスト会議賞の雨宮処凛(かりん)さんもそうだ。社会から孤立し、生きづらさを抱え込んだ人たちへの励ましとなるだけでも、この賞の意味はあると思う。