散歩の足を少し延ばすと、古い社(やしろ)に出くわした。地域の氏神さまらしい。何やら新発見したような気分だ。在宅勤務で始めた毎日の散歩、こんな日はうっとうしさも晴れる▼昨秋亡くなったドイツ文学者の池内紀さんは大の散歩好きで知られる。「散歩本を散歩する」という著書もあり、散歩は<疲れないし、おまけがつく>と、達人のような言葉を残している▼未知と出くわす点で、散歩は遠出の旅と変わらないとも。<近いからといって、その土地、その町を知っているわけではない>。永井荷風らの本に導かれて、東京の裏通りなどを歩くと、<出たときの腹づもりと大ちがい>なものに出会ってうれしくなる。それがおまけだそうだ▼新型コロナウイルス対策で外出自粛。その中で散歩は、密集・密接を避け、少人数ならOKと専門家のお墨付きをもらっている。健康維持や気分転換にいい。ただ、散歩コースや公園は人が増えており、気がかりだ▼人通りの少ない、普段とは違う道を歩いてみてはどうだろう。当方は先のお社だけでなく、地域を知るおまけがついた。散歩は哲学者カントを思索にいざなったが、凡人にもそれなりに脳内の活性をもたらすそうで、それが発見の喜びなのかもしれない▼コロナに注意しつつ、散歩の達人をめざすのもいい。