新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府がIT企業との連携を深めている。人同士の接触削減や濃厚接触者の追跡に最新技術を活用しようとの狙いだ。

 すでに、スマートフォンから取得した利用者の位置情報を基にした主要駅や繁華街の人出データが活用されている。外出自粛の効果や人の密集度を可視化できる利点はある。だが、政府が人々の行動把握に前のめりになりすぎれば、プライバシーを侵害し、監視社会を招きかねない。

 政府の情報収集はどこまで許されるのか。国民的な議論を深める必要があるのではないか。

 政府は3月末、携帯電話大手やIT企業に保有するデータの提供を要請した。位置情報を使った繁華街などの人の流れのほか、「発熱」「マスク」といった検索結果で感染状況や必要な医療品を把握し、対策につなげるとしている。

 それだけではない。政府は、濃厚接触の疑いがある人に警告を発するスマホ向けアプリを、IT企業と協力して開発するという。

 アプリを導入した人同士が近くに居合わせた情報を記録し、感染が判明した際は近接していた人に警告を送る仕組みを想定する。

 利用者を特定できる個人情報は扱わない設計にするというが、情報漏えいなどの懸念は常につきまとう。厳格な情報管理が前提だ。

 新型コロナの感染追跡では、米IT大手のアップルとグーグルも技術協力しあうと表明している。

 スマホなどの利用者が多い巨大企業が手を組むことで、世界中の人々の行動がいやおうなく管理されることになりかねない。

 中国では、先端技術を駆使して14億人の国民の健康状態や移動を監視するシステム構築が始まっている。先行導入された地域では、感染したタクシー運転手が接した約200人もの乗客を特定し、隔離した事例が報告されている。

 韓国でもスマホのアプリで外出しないよう監視し、連絡がつかない時は警官の出動もあるという。

 気になるのは、こうした手段が感染拡大を防ぐのに成果があったと強調する声が、それぞれの国から聞こえてくることだ。

 ウイルスを防ぐのにあらゆる手段を講じることは重要だが、プライバシー保護を無視してはならない。感染防止の緊急的手段が恒常的に使われることの危うさは日本でも心に留めておくべきだ。

 企業も、政府に対して行う協力の範囲を明確にし、利用者の権利を守るよう努める必要がある。