西村さんお勧めの本や著者の本(福知山市中ノ・古本と珈琲 モジカ)

西村さんお勧めの本や著者の本(福知山市中ノ・古本と珈琲 モジカ)

外出自粛の中で読む本について語る西村さん

外出自粛の中で読む本について語る西村さん

 室内にいながら、さまざまな世界や人生について思いを巡らすことができる読書。京都府福知山市中ノの「本と珈琲 モジカ」店長でブックキュレーターの西村優作さん(35)に、お薦めの本を聞いた。

 新型コロナウイルスと同じく、世界でかつて流行したペスト。アルベール・カミュの「ペスト」は世界的に読まれているが「ロビンソン クルーソー」で知られるダニエル・デフォーの「ペスト」もお薦め。疫病で社会や人間の動きがどうなるかを知り、心構えができる。疫病文学としてはエドガー・アラン・ポオの短編「赤死病の仮面」もある。
 逆に時間のある今だからこそ、映画化されて話題になった「指輪物語」や「ナルニア国物語」のファンタジーの世界に浸るのもいい。本を読むことの楽しさを教えてくれる作家として須賀敦子が上げられる。イタリアと日本で暮らした経験がある著者の「ユルスナールの靴」や「ミラノ 霧の風景」がお薦め。宮沢賢治の著作も読んでほしい。主人公が別世界に入る「銀河鉄道の夜」や「注文の多い料理店」が代表。現実の日常と非現実の世界が溶け合い、人生を豊かにしてくれる。
 狭い行動範囲での人間観察の面白さが光る作品として、夏目漱石の「吾輩は猫である」を上げたい。当時の漱石の教養が詰め込まれた作品でさまざまな本の入り口にもなる。
 旧知の名作でも翻訳者や注釈者によって楽しみ方も変わってくる。ミュージカルの原作で有名な「キャッツ」(T・S・エリオット著)は翻訳によってタイトルも違う。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」も独自の解釈や時代背景を交えて解説する注釈本も面白い。
 自宅にとどまることが求められている。そんな中でスラヴ文学者の沼野充義が東欧に旅行した時の思い出を書いた「屋根の上のバイリンガル」は異国を感じられる。フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの「ムーミン」。「ムーミンママのお料理の本」(サミ・マリラ著)は登場する料理を紹介する本で、サラダやスープを自宅で作っても楽しい。
 漫画では家族の在り方を考えるのにいい「パパトールドミー」(榛野なな恵著)がお薦め。小学生の女の子と小説家の父親の父子家庭が主人公で、「サザエさん」や「クレヨンしんちゃん」とは違った、マイノリティーの家族の日常が描かれている。
 本を通じて作家に出会える、友人のようなもの。本を読んで心の糧を蓄えてほしい。

 にしむら・ゆうさく
 兵庫県豊岡市出身。子どもの頃からエドガー・アラン・ポオと寺山修司を愛読している。2014年からモジカ店長。文学や哲学などに関する約8千冊がそろい、インターネットでの販売も行う。