男性目線の「美しさ」が過度に求められていないか。企業はいま一度考える必要がある。

 接客業務を担う女性従業員にヒールのある靴を着用させる規定があるかどうかを、航空会社を中心に共同通信がアンケートしたところ、多くの社が規定を設けていた。

 「ヒールの高さは3~4センチ、幅3~4・5センチ」などと具体的な数字で取り決める企業もある。ここまで細かく定められていることに違和感を持つ人もいるだろう。

 企業は「制服との調和を図るため」「客に不快感を与えないため」などと理由を挙げる。だが専門家は、着用が「女性のマナー」とされてきたことが大きな原因だと指摘する。

 ヒール靴の長時間使用で、腰痛や外反母趾(ぼし)といった健康被害に苦しむ人は少なくない。女性に強いるのは性差別でハラスメントにもなり得るとも言われる。

 日本の男女平等は遅れているとよく批判される。改善を求める運動「#KuToo(クートゥー)」は多くの賛同を集めた。足元からも「働き方改革」を進めるべき時ではないか。

 アンケートは、ヒールのついたパンプス(足の甲のあいた婦人靴)姿での接客で知られる航空や銀行・保険、百貨店、ホテル、携帯電話の計32社を対象に実施し、28社が回答した。

 「着用を義務化、または推奨する規定」があるのは20社に上る。3社は規定はないがガイドラインなどを設けていた。見直すと答えたのは2社のみだった。

 航空会社のほとんどが客室乗務員(CA)などに具体的な高さや幅を定めている。だが動きやすさや疲労防止を考えれば、本来は仕事に向くとは言いがたい。

 ベテランのCAからは「『足が痛い』は日常会話」との声も聞かれる。海外の航空会社ではヒールなしでもOKのところもあるという。来年就航する社はスニーカーを採用予定だ。

 戦後、欧米の服飾ブランドがヒールを取り入れた影響で、日本でもヒールを美しさの基準とする風潮が根付き、女性らしさの象徴になったとされる。

 だが「女らしさ」「男らしさ」を従業員に過度に求めることは、本人が望まない場合、精神的な苦痛につながりかねない。

 社会通念や慣習を理由に、理不尽な働き方を押しつけられて困るのは男性も同じだ。当たり前と思われている労働条件や職場環境を改めて見直したい。