今月15日に行われた韓国総選挙は、革新系与党「共に民主党」が圧勝した。文在寅(ムンジェイン)政権の新型コロナウイルス対策への評価が高い支持を得たようだ。

 コロナ問題の長期化が予想される中、国民は政権に安定基盤を与え、腰を据えて取り組むことを選んだ形だ。

 気がかりなのは、日本との関係改善が見通せないことだ。

 対日関係の優先度は低く、選挙では目立った争点とならなかった。選挙後の文政権の関心も後継者擁立や最重要課題の南北関係に向かうとみられる。

 日本政界とのパイプ役を担った重鎮議員らが立候補せず、知日派の層はさらに薄くなったとの指摘もある。

 その一方で、政権基盤が安定し、余裕ができたことが関係改善にプラスに働くとの見方もある。

 これまでの韓国政権は国民の支持をつなぎとめるために、日本に対してより強硬な姿勢を示すことがあった。圧勝となれば、そうした国内の反日感情を意識しなくても済むようになるのではないか。

 文氏はぜひ関係改善の契機ととらえるべきだ。

 菅義偉官房長官は「日韓間のさまざまな懸案について、引き続き韓国側に適切な対応を求めていく方針に変わりはない」と述べた。日本側も対話のチャンスを逃さないようにしたい。

 選挙戦で与党は当初、感染拡大によって劣勢だった。文政権の対策が効果を上げ、国際的に高く評価されたことで形勢を覆したとされる。

 国内の状況が改善したとしても世界的に感染が拡大する中、経済に与える影響は深刻だ。

 コロナ禍を乗り越えるためには、「一国主義」ではなく、国際社会が協調して取り組むことが欠かせない。とりわけ隣国として日韓関係の重要性は高まるばかりだろう。

 最大懸案の元徴用工問題を巡り、韓国内での解決を求める日本側との議論は平行線のままだ。原告側は日本企業の資産売却手続きを進めており、完了すれば日本の反発は必至だ。

 日本が昨年7月に半導体材料の輸出規制強化を始めて以降、文政権は材料・部品の国産化を官民一体で推進し、「脱日本」の姿勢を鮮明にしている。

 だが昨年12月には1年3カ月ぶりの首脳会談が行われ、半島情勢を巡る緊密な連携を確認、関係修復のスタートラインに立ったところでもある。

 韓国大統領の任期は1期5年で再選できない。文氏は来月10日で就任4年目に入る。22年3月の次期大統領選での後継候補レースは既に始まっている。

 有力候補と目される知日派の李洛淵(イナギョン)前首相が当選し、存在感を強めた。大統領にふさわしい人物を問う世論調査では一貫して1位であり、注目したい。

 文氏も隣国との関係を最悪の状態にしたままでバトンを渡したくはないはずだ。

 日韓両政府は長期的な視野に立ち、関係の再構築を探る努力を続けてほしい。共通の課題として取り組むコロナ対策も、その足がかりの一つになるのではないか。