素数、約数に素因数分解。授業で学んだことを一生懸命思い出した。現代数学で最重要な難問「ABC予想」が証明されたという▼京都大数理解析研究所の望月新一教授が自身で構築した理論に基づき論文にまとめた。予想は整数の足し算と掛け算の関係性にまつわる命題。今回の件で多くの未解決問題の証明につながるとされる▼発表に際し望月さんは、優れた研究者がいる数理研の意義を指摘した。過去の在籍者を見ても超関数理論の佐藤幹夫さん、数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した広中平祐さんや森重文さんらがいる▼その一人である故伊藤清さんは「ウォール街で一番有名な日本人」と言われた。創始した確率論が株価変動の記述など金融工学に広く応用されたからだ▼伊藤さんは著書「確率論と私」で自身の論文を<楽譜>に例えた。多くの研究者がそこから響きを聞き取り、新発想を加え独自の展開で<抽象的な数学の世界と現実の世界との間に見事な橋を架ける>ことになったと▼音階の研究で知られるピタゴラスの昔から数学と音楽には深い関わりがある。望月さんの証明は著名な数学者も理解が難しいというが、いつか新しい楽譜が生まれるだろうか。目の前のことばかりに追われる毎日、ひととき違う世界に心を遊ばせた。