<ソラドリWEB> 

 

 深い緑の山を抜けると、目の前に薄紅色の森が広がった。吉野千本桜として全国に知られる吉野山(奈良県吉野町)。いつもと違い、ひっそりと桜は咲き誇っていた。


 シロヤマザクラを中心に約200種3万本が植わる。満開になった4月上旬の早朝、ドローンを少しずつ進めた。かれんな白から濃いピンクまで、桜は斜面を覆うように咲き、山の緑と相まってモザイクのように見える。

 

 桜の起源は奈良時代にさかのぼるという。修験道の祖とされる役行者が修行中、桜の木に蔵王権現の像を刻んだという伝説が残る。地元の人にとっても桜は特別な存在だ。「桜の枝を折ることは、自分の手を折るのと一緒。神様の木をお守りする気持ちでいる」と、吉野山観光協会の会長(66)は話す。


 今年は新型コロナウイルスの影響で、人出は例年の1割程度だったという。「何とか早く終息してくれれば」。「神木」に向かって、会長は祈る。