トランプ米政権が、中国への制裁関税「第4弾」の一部を発動した。中国からの輸入品約3200品目、1120億ドル(約12兆円)分に追加関税率15%を課した。

 中国は同時に、米国からの輸入品約750億ドル(約8兆円)に最大10%の追加関税を課す報復措置の一部を実施した。

 両国の制裁と報復の応酬が続く「経済冷戦」の状況だ。膨らむ高関税品は自国の消費者と企業にも打撃を与え、景気減速に拍車をかける恐れがある。

 世界経済も巻き込む「消耗戦」に勝者はいないことを、両国政府は改めて認識すべきだ。

 米国の制裁第4弾は、家電や衣服、靴など日用品が中心なのが特徴だ。主に企業向けの第1~3弾と合わせると、中国からの輸入品ほぼ全てが対象となる。

 トランプ氏は「戦いに勝つ」と強調する一方、第4弾のうちスマートフォンやノートパソコンなど約1600億ドル(約17兆円)分の発動は12月へ先送りした。

 中国への揺さぶりだけでなく、国内の輸入品価格の上昇が市民生活を直撃し、特に年末商戦に影響するからにほかならない。

 国内経済の減速への懸念が出ており、米産業界は「大惨事を招いた1930年代のよう」と、世界恐慌を悪化させた保護主義政策になぞらえて第4弾発動に反発している。好景気を支えてきた個人消費を冷え込ませかねない「危険な賭け」といわざるをえない。

 一方、中国は大豆など農水産物や原油への追加関税を発動し、12月には自動車や部品にも高関税を課す構えだ。トランプ氏の支持基盤を意識した対抗措置だろう。

 中国でも消費や投資の低迷に加え、高関税を嫌って国内工場の東南アジアへの流出が広がっている。築いてきた「世界の工場」の存在感が揺らいでいる。

 米中対立の長期化から国際通貨基金(IMF)は7月、今年の世界経済の成長率見通しを3・2%へ4回連続で引き下げた。生活関連への影響拡大は、日本企業の輸出や生産にも大きな打撃となろう。

 米中は首脳会談で2度も「一時休戦」で合意しながら課税合戦を続け、摩擦緩和の兆しはみえない。

 トランプ氏は、中国の知的財産権侵害や対中貿易赤字の解決を大統領再選への鍵と執念を燃やし、中国はこれに屈すれば習近平政権の威信を損なうと、互いに引くに引けない泥沼にみえる。

 「自国第一」の覇権争いが、自らの足元をも崩す悪循環を止めねばならない。