京都市が6月、行政代執行による解体を公告した空き家(東山区)

京都市が6月、行政代執行による解体を公告した空き家(東山区)

 「隣の家が空き家で、塀が倒壊寸前。取り壊してほしいが、所有者と連絡がつかなくて困った」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に空き家に関する切実な相談が寄せられた。傾いた塀を元に戻したいが、隣家の所有者に無断で触るわけにもいかず、困っていたという。老朽化した空き家による防災や治安上の問題は京都市内各地で起きており、同じような悩みを抱えている人は少なくない。対策の現状を追った。

 声を寄せてくれたのは伏見区の会社員男性(42)。一軒家の自宅の隣は約10年前から不在で、当初は飛んでくる落ち葉を片付ける程度だったが、昨年の相次ぐ台風でトタン屋根が飛び散り、エアコンの室外機が落ちてきそうになったという。

 通行人が投げ捨てたごみがたまり、次第に塀も傾き始めた。大阪府北部地震で高槻市の小学校のブロック塀が倒れ、犠牲者が出た後でもあり、「子どもが庭で遊んでいる時に倒壊したら…」と危機感を募らせた男性は区役所に相談した。しかし、一向に連絡はなかった。

 今年4月、近所の人に聞いて回ったところ、所有者の連絡先を知る人を見つけることができた。所有者はすぐに塀を撤去するなど対応してくれたため事なきを得たが、「連絡がつかなかったらどうしようもなかった」と振り返る。

 市は対応していなかったのか。市民から通報のあった空き家の対応はまち・再生創造推進室の担当で、管理状態を確認し、不適正だと判断すれば、所有者に助言や指導を行う。男性宅の隣家も同室が所有者を調べていた。職員が現地を訪問したときは男性が不在で「すれ違いになってしまった」という。

 男性のように自ら所有者と連絡を取り、解決につながるのはまれなケースで、所有者が不明で連絡先が分からなかったり、分かってもトラブルになるのを避けて思い悩んでいたりする人は多い。市に寄せられた地域の空き家に関する通報は年々増え、昨年度末までの5年間で2879件にも上っている。

 総務省の住宅・土地統計調査によると、2013年時点の市内の空き家は11万4290戸で、通報件数との差は大きい。市は「市が把握できている空き家は氷山の一角。管理不全の空き家が地域にあれば相談してほしい」と呼び掛けている。