新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限や臨時休校によって、配偶者・恋人への暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)や児童虐待の増加が懸念されている。

 在宅で家族が一緒に過ごす時間が増えているためだ。外に出られないストレスや、仕事・収入減などの先行き不安が、弱い相手への暴力に向かうリスクが高まっているという。

 家庭が逃げ場のない密室になり、被害が深刻化しかねない。見守りや相談、支援のつながりを途切れさせず、暴力の兆候を見逃すことなく早期に対応していく必要がある。

 新型コロナの陰に隠れて「DVのパンデミック(世界的大流行)が起きている」。

 国連が今月初め、警鐘を鳴らした。報告書などによると、フランスでは厳しい外出制限後、DVの通報件数が30%増加。欧米、アジア各国で相談やシェルター入り希望が急増し、窮した女性が離婚や自殺に追い込まれる事態も起きているという。

 日本でも既に多くの相談が支援団体などに寄せられている。DVや虐待は通常生活が崩れると増えやすく、阪神、東日本両大震災後も起きたとされる。

 より今回が深刻なのは、外出自粛や在宅勤務で加害者が自宅に居続けることだ。「ずっと監視され、逃げられない」。被害者から悲痛な声が上がり、相談先への連絡が途絶えた例もあるという。周囲の目と支えの手を差し向けることが重要だ。

 被害者を守るため、保護や自立支援の手続きを定めたDV防止法が2001年に施行され、今年で20年目となる。警察へのDV被害の相談は19年に8万2千件を超え、過去最多を更新した。各府県の配偶者暴力相談支援センターが扱うDV案件も増加の一途だ。

 大きな問題は、家庭内のDVと児童虐待に密接な関係がみられることだ。

 全国の児童相談所が18年度に虐待相談・通報で対応した約16万件のうち、子どもの前で配偶者に暴力を振るう面前DVなど心理的虐待は55%で最も多い。

 一昨年に東京の5歳女児、昨年に千葉の小学4年女子が虐待死した事件では、国や県の検証で「父親による母親へのDVの疑いと、虐待を関連づけた対応が不十分だった」と指摘された。虐待、DV両面の入り口から暴力の芽を摘む必要がある。

 政府は、今月施行の改正児童虐待防止法などで児相と各支援センターの連携強化を明記。虐待とDVのリスクを包括的に評価し、対応するガイドラインづくりを進めている。

 コロナ禍への対応では、全国の自治体に虐待を受けている恐れのある子の状況把握を要請。電話や会員制交流サイト(SNS)を使ったDVの相談や、宿泊場所の確保にも取り組むとしている。

 児相や支援センターの対応事案は増え続け、現場の職員たちの負担が過重となっている。要員増や専門人材の育成を図るとともに、被害者支援や加害者の更生などで実績、ノウハウを持つ民間団体との協力を広げていくことが必要だろう。