マスクは大正初期のスペイン風邪の流行から国内で普及したという。<純白のマスクを楯(たて)として会へり>野見山ひふみ。冬の季語だが、歳時記にある句が今年の春は切なく響く▼甲賀市では季節ごとに変身する信楽高原鉄道信楽駅前の巨大タヌキ像が忍者姿となり、初めて特大マスクをかけた。関係者は「新型コロナウイルスが終息するまでの辛抱。マスクを外す日が来たら信楽を訪れて」と訴える▼信楽焼の女性陶芸家を主人公にしたNHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」が終わって約1カ月。観光客が押し寄せた週末の光景はコロナ禍で一変した▼捕らぬたぬきの皮算用のように市は放映宣伝効果を5千億円超とはじき、朝ドラの遺産を活用した地域活性化をもくろんでいた。それが、台風接近による昨秋の陶器まつりに続いて大型連休中の陶器市も中止になる。逆風がやまない産地からは悲鳴が聞こえる▼外出自粛に休校休業。当たり前だったことができない生活が長引き、先行き不安が広がる。だが、こんな時こそ大切な人の命を守るための行動に努め、地方への感染拡大と悪影響を食い止めたい▼落語家の故桂小金治さんに「辛抱という棒に花は咲く」の名言がある。「辛」に横棒1本を加えると「幸」だ。マスク姿のタヌキ像も耐え忍んでいる。