詩人でベオグラード大教授山崎佳代子さん(宇治市を通じて本人が提供)

詩人でベオグラード大教授山崎佳代子さん(宇治市を通じて本人が提供)

 京都府宇治市は3日、「第29回紫式部文学賞」に、詩人でセルビアのベオグラード大教授山崎佳代子さん(62)のノンフィクション「パンと野いちご 戦火のセルビア、食物の記憶」(勁草書房)を選んだと発表した。

 山崎さんは静岡市出身で、北海道大卒。サラエボ大留学などを経て、1981年からベオグラード在住。翻訳家。「パンと野いちご」では、91年から始まるユーゴスラビア内戦下を生きた女性らから聞き取った悲惨な戦争体験に加え、彼女らが当時何を食べたのかを詳細に記述した。

 山崎さんは「過酷な歴史に翻弄(ほんろう)される無名の人びととの出会いが、私の文学の出発点。身にあまるご褒美に心をひきしめ、日本語の織物を織り続けようと思います」とコメントを出した。

 選考委員長の鈴木貞美・国際日本文化研究センター名誉教授は発表の記者会見で「心が通じ合い、インタビューで会話を引き出せるのは彼女の特殊な能力。みんな違う不幸がありながら、食べ物で(話題を)そろえることで、ひとつの作品にまとめられている」と講評した。文学賞は、女性作家の文学作品が対象。全国の出版社や作家が推薦した67作品から選んだ。

 市民が創作した優れた文学作品に贈られる「第29回紫式部市民文化賞」も発表。34作品から、早北千枝さん(72)=同市大久保町=の小説「よそになる身の 秀能(ひでとう)物語」と、安養寺住職吉水秀樹さん(60)=同市莵道=の研究「ダニヤ経」(方丈堂出版)を選んだ。

 「秀能物語」は鎌倉時代前期の武士で歌人の藤原秀能の数奇な生涯を描く。「ダニヤ経」は、ブッダの教えを問答形式で説いた経典を翻訳、解説した。

 市民文化賞の選考委員特別賞には、文章サークル「ゆりの集い」の随筆「三十周年記念 ゆりの集い 第三十号」、山城富広さん(88)=同市宇治=のノンフィクション「美しいお茶の魂」が選ばれた。

 贈呈式は11月9日、源氏物語ミュージアム(同市宇治)で行われる。