ベテラン運転士の指導を受けながら列車を運行する見習いの鈴木さん(右)

ベテラン運転士の指導を受けながら列車を運行する見習いの鈴木さん(右)

安全運行のため、沿線を歩いて点検する作業員たち(亀岡市篠町)

安全運行のため、沿線を歩いて点検する作業員たち(亀岡市篠町)

 午前10時2分、乗客が一人もいないトロッコ列車が、嵯峨駅(京都市右京区)を出発した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、嵯峨野観光鉄道は4月8日から運休中だが、実は週に3、4回、列車が1日5往復している。見習い運転士鈴木貴之さん(36)の訓練のためだ。

 「出発進行!」。鈴木さんの大きな掛け声とともに、列車はゆっくりと加速していく。指導員が横に付き、真剣な表情で前を見つめる。沿線は新緑の盛り。保津川のゆったりとした流れとともに、車窓には絶景が広がった。
 鈴木さんは昨春、鉄道車両メーカーから転職し、入社した。運転や駅業務など鉄道に関わるさまざまな分野を経験したいと思ったからだ。中でも運転士は憧れ。「こんなに美しい景色をお客さんに見てもらえないのは残念ですが、いい訓練の機会と思って技術を磨いています」と話す。
 この日、列車に乗っていたのは、保線作業のスタッフ5人。ほとんどの社員が在宅勤務だが、運休中も安全管理は休めない。終着のトロッコ亀岡駅で降りると、始発駅まで7・3キロの線路を点検しながら歩いて戻る。
 スパナでレールをたたいて音を聞き、劣化やボルトの緩みを確かめたり、油を塗ったり、電気設備を確認したりと、細かく目を光らせていた。電気担当の小高岳彦さん(36)は「いつでも再開できるよう、万全を尽くしている」と表情を引き締めた。

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、京都市内の文化、観光施設の大半が休館している。例年ならにぎわう季節、人が消えた館内では何をしているのだろう。日常の再来を待つ風景を見つめた。